
三菱自動車が日産自動車、ホンダとともに米国での車両共同生産を検討していると、日本経済新聞(日経)が4日に報じた。米国の高関税政策に対応し、3社は協力を通じたコスト競争力の確保に乗り出した形だ。
三菱自動車の加藤隆雄社長は日経のインタビューで「現地での共同生産など、日産やホンダとの協業について検討を続けている」と述べ「次期中期経営計画の発表までに具体化したい」とし、決定時期を来春までと示した。
3社が検討している協業内容が具体的に示されるのは今回が初めてとなる。三菱自動車は昨年8月、日産とホンダによる包括的協業協議に参加し、今年2月に日産・ホンダの経営統合が不調に終わったことを受け、3社協業へと方向転換した。
三菱自動車と日産は今年5月、日産の米国工場でSUVの共同生産検討を開始すると発表しており、3社協業においても日産の米国工場を活用する案が有力視されている。日産は米国にキャントン工場(ミシシッピ州)とスマーナ工場(テネシー州)の2拠点を持つが、販売不振により稼働率低下が収益を圧迫している状況だ。
三菱自動車は米国に生産拠点を持たず、全ての車両を日本から輸出している。高関税政策によりコストが増加し、2025年上半期の北米事業は39億円の赤字に転落した。前年同期の476億円の黒字から大幅に悪化したのだ。
2024年の三菱自動車の米国販売台数は11万3,000台と、日産やホンダの約10分の1の水準にとどまる。加藤社長は「北米事業を自社単独で維持するのは極めて厳しい」と述べ、新工場建設では採算が見込めないとの判断を示した。
ホンダは米国に5つの工場を保有しているが、いずれも高稼働率で生産拡大の余地がない状態だ。3社合計の2024年の米国新車販売シェアは約15%でトヨタを上回る規模だ。特定車種での共同生産が実現すれば、コスト削減効果が大きいとみられる。
日産とホンダは北米での車両共同開発も検討している。加藤社長は両社の共同開発への参加について「米国でも協力できれば望ましい」と述べ、国内の軽自動車共同開発を成功例として挙げた。三菱自動車と日産は共同出資会社で企画を進め、日産が車台を開発、三菱自動車の水島製作所で生産する体制を構築している。
加藤社長はまた、米国以外の地域での協業も進めていると述べた。フィリピンでは日産製ミニバンの供給を受け、オーストラリアなどオセアニア地域では三菱製ピックアップトラックを日産へ供給している。
日産の経営不振を受け、三菱自動車株の持ち株処分の可能性にも注目が集まる。日産は2016年に三菱自動車と戦略的提携を結び、34%の株式を取得したが、昨年11月の一部売却で出資比率は約27%まで低下した。日産のイヴァン エスピノーサ社長は「現時点で売却は検討していない」とし、資本関係維持の姿勢を示した。
加藤社長も「まずは協業の議論を進めることが先決」とし「さらに踏み込んだ再編が必要かどうかは今後考えていく」と強調したと日経は伝えている。

















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