ウクライナに続き、ドイツ・ポーランド・カザフでも核保有の必要性
日韓豪では議論が活発化 カナダでは米国けん制の必要性も

ドナルド・トランプ米大統領によるウクライナ紛争の仲介をめぐり、議論の焦点は、ウクライナが領土などをどこまで譲歩すべきかという点に絞られつつある。
これに関連して、米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」は4日(現地時間)の社説で、米国の和平案が世界的な核拡散を招くおそれがあると警鐘を鳴らした。以下はその要旨である。
米政府の最近の対応は、米国の「核の傘」を本当に信頼してよいのかという点について、非核保有国の間で議論を一段と加速させかねない。ウクライナに対して大幅な領土の譲渡を迫っている事実が、非核保有国に独自の核戦力保有を検討させる動きを一層強める可能性がある。
1990年代にウクライナへ核兵器の放棄を強く求めたのは、ほかならぬ米国だった。ウクライナは米国による安全保障上の保証と引き換えに核兵器を手放したが、その保証はすでに形骸化している。
2014年にロシアがクリミア半島へ侵攻した際、当時のバラク・オバマ米大統領は実質的にそれを容認した。オバマ氏は世界から核兵器をなくすことを目指していたが、その結果として、ここ数十年で最も深刻な核拡散リスクを生み出す環境を招いたとも言える。
この経緯は、ウクライナをめぐる米国の利害が、単なる領土保全の問題をはるかに超えていることを物語っている。
当然のことながら、近年ウクライナ国内では、自前の核能力保有を支持する世論が高まっている。
同様の問題意識は世界各地の同盟国にも広がっている。なかでも顕著なのが東アジアだ。中国共産党がチベットや香港への支配を強め、いまは台湾への圧力を強めている状況を、各国が注視している。
韓国と日本では、自国で核兵器を保有すべきかどうかをめぐる議論が続いている。米誌「アトランティック」は、韓国で核保有の是非を尋ねると、ほぼすべての回答者がウクライナの例に言及したと伝えている。
米国の安全保障に対する信頼が揺らぐなか、オーストラリアでも核武装論が勢いを増している。カナダも事情は同じで、場合によっては米国の「膨張」にも備えなければならないという声が出ている。
旧ソ連の核兵器を放棄した点でウクライナと共通するカザフスタンも、再び核保有の道を模索する可能性がある。カザフスタンは、あらゆる側面でロシアの攻撃に脆弱だ。ロシアと長く紛争の火種を抱える国境を接し、ロシア民族主義者による復古主義的な圧力にさらされ、政府は徐々に独自路線を強めている。
カザフスタンは米国と核兵器廃棄で合意した国でもあり、非核保有国の中では世界最大規模の兵器級プルトニウムを抱えている。こうした状況を踏まえると、核開発計画の再始動を少しも検討しないとすれば、その方がむしろ不思議だと言える。
欧州でもドイツやポーランドで核武装論が再び浮上している。とりわけポーランドを北大西洋条約機構(NATO)に迎え入れた背景には、独自の核開発に走らせないという思惑があったとされる。
当時、ポーランド当局者が米政府に対し「NATOに加盟させないのであれば、われわれは核兵器を開発する。ロシアを信用していない」と伝えたとされるが、その判断は結果的に正しかった。
しかし今、米国がウクライナに対し、安全とは言い難い和平と引き換えに領土の譲渡を迫り始めたことで、ポーランドは新たな岐路に立たされている。すなわち、米国を信頼し続けるのか、それとも「核による覇権」に対抗するため、自ら核保有へ踏み出すべきかという選択を迫られている、というのが社説の問題提起である。














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