トランプ政権が中国のサイバー攻撃組織に対する制裁計画を土壇場で見送ったと、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が4日(現地時間)に報じた。

10月末、釜山での首脳会談(いわゆる「釜山談判」)で習近平国家主席と合意した「貿易休戦」を壊さないための措置とみられている。
FTによると、制裁の対象と想定されていたのは「ソルト・タイフーン」の名称で知られるハッキング作戦を主導した中国国家安全部の委託企業群だという。来年4月に予定されているトランプ大統領の訪中を円滑に進める狙いもあると分析されている。
複数の元・現職高官は、トランプ政権の対中政策の主眼が「希土類(レアアース)などの戦略物資で中国への依存度を引き下げるまで、当面は安定を優先する方向に傾いている」と指摘する。
一方、この決定には政権内からも反発が出ているとFTは伝える。政権内の対中強硬派は、トランプ大統領が「貿易取引のために国家安全保障を犠牲にしようとしている」と批判しているという。
米シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のアジア安全保障専門家ザック・クーパー氏は、「今回の措置は戦略に見せかけた譲歩にすぎない」と懸念を示した。
ソルト・タイフーンは、中国系ハッカーが米国の大手通信会社のネットワークに侵入し、高官らの暗号化されていない通話内容やメッセージを盗み見ていたとされる事案だ。捜査機関が用いる合法的な通信傍受システムまでハッキングし、米側の捜査・情報収集能力が中国にさらされたとも伝えられている。
トランプ政権の対中政策が一貫性を欠いているとの批判も出ている。政権は、NVIDIAのAI半導体「H200」の対中輸出を認めるかどうかを協議するため、高官会議を設けるなど、安全保障関連の規制を交渉カードとして扱う姿勢を見せているためだ。
保守系シンクタンク、ハドソン研究所のマイケル・ソボリック氏はFTに対し、「習主席はこれまでにも米大統領との約束を反故にしてきた前歴があり、中国共産党は戦略的に時間を稼ぐ手段として交渉を利用してきた」と述べ、「トランプ大統領はこうした罠に十分警戒すべきだ」とくぎを刺した。














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