
ドナルド・トランプ米大統領は、ジョー・バイデン前大統領が自動署名機「オートペン(Autopen)」で署名した恩赦はすべて無効だと主張した。
トランプ氏は2日(現地時間)、自身のSNSに「バイデン政権下で、許可されていない『オートペン』で署名されたすべての文書、布告、行政命令、覚書、契約は無効であり、もはや何の効力も持たない」と投稿した。さらに、「そのように署名された恩赦(Pardons)、減刑(Commutations)をはじめ、あらゆる法的文書を受け取った人々は、それらが完全に失効しており、法的効力は一切ないことを認識すべきだ」と強調した。
トランプ氏は先月28日にも、「スリーピー・ジョー(バイデン前大統領)がオートペンで署名した文書は全体の92%に達する」とし「バイデンが直接署名していないすべての行政命令などを取り消す」と述べていた。今回は、対象を「恩赦」に特定して改めて強調した形だ。
トランプ氏は就任直後から、バイデン前大統領がオートペンで署名した恩赦は無効だと主張してきた。オートペンによる署名は、バイデン氏自身の判断ではなく、ホワイトハウスのスタッフによる「専横」だというのがその理由だ。ただし、そうした専横を裏付ける具体的な根拠は示されておらず、主にバイデン氏が高齢で認知能力が低下しているという主張が背景にあるとみられる。
トランプ氏は、バイデン前大統領が退任直前に実施した大規模な恩赦、とりわけ息子のハンター・バイデンや、2021年の連邦議会議事堂襲撃事件を調査していた民主党議員らに対する恩赦を問題視しているとされる。『FOXニュース』によれば、バイデン氏はハンター氏への恩赦状については、他の対象者とは異なり自筆で署名していたことが確認されたという。
一方で、今回のトランプ氏の主張どおりに扱えば、バイデン政権下でオートペンによる恩赦や減刑を受けた人々は、再収監や刑期延長の対象となる。しかし、こうした措置が実際に取られる可能性は低いとみられている。主要海外メディアの報道によれば、恩赦は行政命令や政府契約とは異なり、事後に撤回することはできないためである。また、大統領の決裁が自筆の署名かオートペンによる署名かによって、恩赦の効力が変わるとする法的根拠も存在しない。
米紙「ニューヨーク・タイムズ(NYT)」は7月「すべての決定は私が下した。スタッフには、オートペンで恩赦状に署名するよう指示した」とするバイデン前大統領の反論を掲載した。さらに「バイデン政権下でオートペンを管理していた秘書官は、恩赦状を署名装置にセットする前に、大統領が会議で恩赦を口頭で決定したことを確認する手続きがある」と説明した。
「CNN」は10月「前大統領が決定した恩赦を無効化しようとする動きは、前例のない政治的報復であり、憲法にも法律にも根拠がない」と報じたうえで、「憲法にはオートペンに関する言及や、大統領が自ら署名しなければならないという規定は一切ない」と指摘した。
また「CNN」は、18世紀にバージニア州下院が独立革命期にイギリス側に加担したとして反逆罪で有罪となった被告人らを恩赦したものの、上院の反対で無効化された例があるとしつつ、これは恩赦を大統領の固有権限と定めた憲法制定以前の事例だと説明した。













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