トランプ第2期の新「安保戦略」に波紋
「期限を守れなければ米国は関与を停止」と警告
EU「装備の実戦配備など現実的ではない」

ドナルド・トランプ大統領率いる米政権が、最重要同盟の一つである欧州連合(EU)に対し「2027年までに北大西洋条約機構(NATO)の通常戦力の大部分を担うよう求める」と迫り、新たに公表した国家安全保障戦略(NSS)をめぐって波紋が広がっている。
ロイター通信によると、米国防総省は先週、ワシントンで開かれた欧州代表団との会合の場で、こうした方針を伝達した。国防総省側は会合で「欧州が2027年という期限に間に合わない場合、米国はNATOの軍事計画や部隊調整など、一部の防衛調整メカニズムへの関与を停止する可能性がある」と警告したという。ただ、目標達成の具体的な評価基準などには触れなかったとされる。
これに対し欧州側は、そもそも米側の要求が現実的ではないとの見方を強めている。米国製の防衛装備の購入を増やしたとしても、実戦配備までには数年を要するうえ、米軍がこれまで担ってきた情報・監視・偵察などの中核的な能力を短期間で代替するのは難しいためだ。一部の米議会関係者からも、国防総省がこのようなメッセージを欧州側に伝えたことに懸念の声が上がっている。
トランプ政権が同日公表したNSSの欧州関連の項目でも、「現在の傾向が続けば、20年以内に欧州大陸は『文明の消滅(civilizational erasure)』という、より厳しい見通しに直面する」と痛烈に批判した。そのうえで、欧州におけるロシアとの戦略的安定の再構築や、欧州自身が防衛の主要な責任を負うべきだとする考え、NATOを「永続的に拡大し続ける同盟」とみなす時代の終焉などを打ち出した。
新NSSは、米本土とアメリカ大陸、そして中国を念頭に置いたインド太平洋地域に重点を移す「ドンロ主義」(トランプ大統領流の新孤立主義)を強調しており、戦後、米国が主導してきた欧州中心の同盟秩序を見直す方針を鮮明にしたとも受け止められている。
とりわけNSSは、「愛国的な欧州政党の影響力拡大は、大きな楽観の根拠となる」と記し、反移民を掲げる強硬右派政党への支持を事実上表明した。
こうした報道をめぐり、EU外交・安全保障上級代表のカヤ・カッラス氏は6日、カタールで開かれたドーハ・フォーラムで「米国はEUにとって最大の同盟国だ」と述べ、米側に正面から対抗する姿勢は控えるコメントにとどめた。














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