
台湾が改正された国家安全法に基づき、自国の重要な半導体産業を対象に「営業秘密調査」に着手したところ、捜査対象が中国ではなく、米国と日本の企業だったことが明らかになった。
Newsisによると、企業競争力の中核となる技術や情報の不正取得を法的に規制する狙いだという。しかし、これまで技術流出の主犯と指摘されてきた中国が対象に含まれていない点が注目を集めている。
11日(現地時間)、フィナンシャル・タイムズ(FT)は、台湾検察が先週、日本の半導体製造装置メーカーである東京エレクトロンの現地子会社を起訴したと報じた。同社が台湾の半導体メーカーTSMCの営業秘密の窃取を防げなかったことが理由とされる。
これに先立つ先月末には、7月にTSMCを退社してインテルに移籍したロ・ウェイルン元TSMC副社長の自宅2カ所に対して家宅捜索が行われた。検察は、ロ元副社長がインテルに「国家核心先端技術」を提供したかどうかを調査中だ。
台湾の法律・産業専門家らは今回の措置について「台湾を世界経済の要に押し上げた技術を、ようやく適切に保護し始めた」と評価している。
一方、FTは「国家安全法施行後、初めての営業秘密事件の対象が中国ではなく、日本の供給企業と米国の顧客であり競合企業だった」と指摘し「両社はいずれも台湾の最も近い同盟国に属する」と報じた。
今回の件は、ドナルド・トランプ米大統領が最近、中国との取引の可能性に言及したほか、台湾に対して「米国の半導体産業を盗んだ」「米国の安保支援にただ乗りしている」と発言するなど、論争が続く中で浮上した。
米国で活動する台湾系半導体企業の幹部は、この捜査を「犬が人を噛む話ではなく、人が犬を噛むような話だ」と表現した。これまで問題視されてきた中国による人材・技術流出や、台湾が米国の技術を盗んだとするトランプ大統領の主張と全く逆の状況が生じていることを示唆する発言といえる。
半導体企業に投資する米国系ファンドの幹部も「台湾の今回の措置は地政学的リスクを高めかねない」とし「台湾が本当に米国の半導体産業復活の取り組みを相手に捜査する余力があるのか」と疑問を呈した。
TSMCは製造業の再興を掲げるトランプ政権の圧力を受け、3月に米国内の投資計画を1,000億ドル(約15兆5,720億3,888万7,130円)から1,650億ドル(約25兆6,938億6,416万3,764円)へと拡大した。しかし、米国側はこれでも不十分だとしており、米国内の半導体生産比率を50%まで引き上げる目標を強調してきた。これはTSMCの単独拡張だけでは達成が難しい水準となっている。
一方、台湾が米国の外交・安全保障面での支援を必要とする状況にある中、検察が事件判断において政治的影響を受ける可能性を懸念する声も出ている。
淡江大学のジェームス・チェン教授は「台湾は現在、米国の20%関税引き下げをめぐって通商交渉を進めており、米国の要求を拒みにくい状況にある」と説明した。その上で「頼清徳総統が対中強硬路線を維持するにも米国の外交的支援が必要だ」とした。また「政府が今回の事件をてこにしたいと考える可能性はあるが、司法に直接介入することはできない」と述べ「極めて政治的で敏感な事案だ」と指摘した。
なお、2022年に改正された国家安全法は「国家核心先端技術」を海外に無断で移転した場合、初めて刑事処罰の対象とすることを規定した。これは中国への技術・人材流出を防ぐために導入された条項であり、中国へ技術を流出させた場合は、米国・日本など友好国への流出よりもはるかに重い処罰が科される仕組みになっている。















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