化学物質や極端な高温、さらには放射線にも耐えるゴキブリをスパイ活動に活用するという構想が、現実化しようとしている。

米CBSニュースは14日(現地時間)、ドイツのスタートアップ企業スウォーム・バイオタクティクスが、カメラやマイク、ドップラーレーダーなどを搭載した超小型の背負い型装置を装着した「ゴキブリスパイ」の研究を進めていると報じた。
ゴキブリは体が小さく、ほぼあらゆる場所に侵入できるうえ、人間にとって危険な過酷な環境でも生存できるほどの強靱さを持つことから、「スパイ」として理想的な条件を備えているとされる。
スウォームのステファン・ビルヘルムCEOは「数百万年にわたる進化の過程で非常に強靱になり、機動性に優れ、能力も高い昆虫だ」とし「我々が行おうとしている研究において、文字通り完璧な生物だ」と説明した。
スウォームがスパイ用の昆虫として選んだのは「マダガスカルヒッシングゴキブリ」だ。関連研究が豊富で、比較的重い装置にも耐えられることが選ばれた理由だという。名前の通り「シュー」という笛のような音を出すのが特徴で、ゴキブリの中では大型の部類に入り、性格もおとなしいことから、昆虫愛好家の間ではペットとして飼育されることも多い種だ。
このゴキブリの背中には、最大15gの装置が搭載される。探知されにくい微弱な信号を送信し、ゴキブリを目的地へ誘導して諜報活動を行わせる仕組みだ。触角に取り付けられた電極が、ゴキブリ本来の方向感覚を刺激し、狙った方向へ進ませるという。
操作用コントローラーによって個体を制御することが可能で、スウォームは現在、方向制御を自動化するアルゴリズムの開発も進めている。将来的には目的地を入力するだけで、自律的に誘導できるようになる見通しだ。
ビルヘルムCEOは「我々が開発したアルゴリズムを使えば、昆虫の群れ全体を目標地点へ誘導できる。目的地には10匹、100匹が集まることもあり得る」と述べた。
一方で、動物倫理の観点から懸念の声も上がっている。これに対しビルヘルムCEOは「ゴキブリをスパイとして育成するには、最良のコンディションを保つ必要がある。苦痛を感じることもないだろう」とし「我々は昆虫スパイを世話するために最善を尽くしている」と強調した。
スウォームは、ウクライナ戦争の長期化を背景に、欧州の安全保障に対するドイツの懸念が高まる中で設立された。ビルヘルムCEOは「これまでドローンや兵士を投入していた特定地域にゴキブリを投入し、映像撮影や通信、位置把握に活用できる」とし「昆虫の群れ同士による三角測量によって、より正確な位置特定も可能になる」との見方を示した。
現在、スパイゴキブリの研究は防衛および偵察用途に重点が置かれているが、将来的には不安定な地形に投入して生存者を捜索するなど、救助活動への応用も可能だとしている。
スウォームは、ゴキブリに装着する装置の重量を最大10gまで軽量化することを目標に研究を進めている。あわせて、ゴキブリ以外にも、キリギリスやバッタなどを活用した研究にも取り組んでいるという。














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