
英国の公共放送「BBC」が16日(現地時間)、ドナルド・トランプ米大統領が提起した名誉毀損訴訟に対し、法廷で争う姿勢を正式に示したことで、今後の影響に注目が集まっている。
「BBC」は同日付の追跡報道「『BBC』、トランプ名誉毀損訴訟に正面対決へ――得失は何か」で、「『BBC』は重大な岐路に立たされている」と指摘。「トランプ大統領の訴訟提起が現実にならないことを望んでいたとしても、もはや現実を直視すべき時だ」と述べた。
今回の訴訟は「BBC」の時事番組「パノラマ」が、2021年の米連邦議会襲撃事件(1月6日)を扱ったドキュメンタリーで、トランプ大統領の発言を「恣意的に編集した」とされる切り取り疑惑に関連するものである。トランプ氏側は前日、フロリダ南部連邦地裁に総額100億ドル(約1兆5,000億円)に及ぶ名誉毀損訴訟を起こした。
「BBC」の広報担当者は主要外信向けの声明で「今回の件は最後まで争う」と強調し、「BBC」内部および外部の双方から「戦うべきだ」との意見が少なくないと伝えた。トランプ大統領が米メディアに対し相次いで訴訟を起こし、圧力手段として利用してきた経緯を踏まえ、ここで後退すれば報道機関としての自由を自ら損なうことになりかねないとの判断が背景にあるという。
「BBC」は「法的にも勝算がある」とみており、争点として「管轄権」と「悪意の有無」を挙げた。トランプ氏側がフロリダで訴訟を起こした以上、当該番組が同州の視聴者に実際に届き、原告に不利益な影響を及ぼしたことを立証しなければならない。
訴状にはVPN(仮想プライベートネットワーク)を通じた視聴の可能性が言及されているが、それが実質的な名誉毀損につながったのか、また違法視聴行為まで放送局の責任とみなせるのかについては議論の余地があると「BBC」は説明した。
番組の米国内流通に関与したとされたカナダの「ブルーアント・メディア(Blue Ant Media)」も「米国で放送された事実はない」と反論。海外版「パノラマ」には問題視されているトランプ氏演説の編集部分がそもそも含まれていない点を強調した。「BBC」も、当該ドキュメンタリーが米国で正式に放送されたことはないと明確にした。
トランプ大統領は「BBC」が米大統領選の1週間前に番組を公開し、自身の再選可能性を損なおうとする「悪意ある意図」を持っていたと主張している。しかし「BBC」側は、問題の編集箇所は全57分のうち12秒にすぎず、編集は意図的ではなく単純なミスだったと反論。トランプ氏報道が一方的に否定的だったとの指摘についても全面的に退けている。
ただし、訴訟が長期化すれば莫大な費用負担は避けられない。トランプ氏の側近でニュースマックスCEOのクリス・ラディ氏は、「裁判に進めば5,000万~1億ドル(約77億~155億円)かかるが、和解すれば1,000万ドル(約15億円)程度で済む」としている。
「BBC」にとっては時期的な負担も重い。2027年12月31日に期限を迎える次期「BBC」王立憲章の協議を控え、政府との重要な交渉が進む中で、英文化・メディア・スポーツ省は同日、憲章の定例審査に着手した。トップ層の相次ぐ辞任もあり、国際訴訟が組織力を分散させるとの懸念も出ている。
「BBC」は「実際に、『ABC』や『CBS』は勝訴の可能性がありながらも1,500万〜1,600万ドル(約23億〜25億円)で和解した前例がある」と説明し「一方で、『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』や『ニューヨーク・タイムズ(NYT)』は、巨額訴訟に対し正面から争っている」と紹介した。
一部では、英政府が外交的に介入する可能性も取り沙汰されている。しかし首相官邸は、トランプ大統領を説得するために外交資源を投じることには慎重な姿勢を崩していない。
「BBC」は「公式発言とは裏腹に、内部では極めて慎重に次の一手を見極めているようだ」と述べ、「不確実性が大きく、政治的負担も重い案件だ」と指摘した。













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