ベネズエラ、海軍が護衛したタンカー出航
米国、「タンカー護衛作戦を認識」…対応を検討

米国の海上封鎖に対抗し、ベネズエラが海軍にタンカーの護衛を命じたことで、両国の衝突可能性がさらに高まっている。これまで消極的だった中国と中南米諸国も介入に乗り出した。ドナルド・トランプ大統領が国家安全保障戦略(NSS)で国家安全保障の最優先事項として規定した西半球優先主義が初の試金石に立たされた。
ベネズエラも海軍力で対抗、中国も介入
ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は海軍に石油関連製品を輸送する船舶を護衛するよう命じたと「ロイター」や「ニューヨーク・タイムズ」などが17日(現地時間)報じた。前日、ドナルド・トランプ大統領はベネズエラを往復する、すべての制裁タンカーに対する全面的かつ完全な封鎖を命じた。米国の封鎖にベネズエラも海軍護衛で対抗した形だ。
マドゥロ政府はトランプ政権が9月初めからカリブ海で麻薬船舶の取り締まりなど自分たちを狙った武力行使に直接対応してこなかった。しかし、米国が封鎖しようとするタンカーなどに海軍を護衛させることで、米国との武力衝突の可能性が高まることになった。
ベネズエラ東部沿岸では16~17日、海軍の護衛を受けた船舶が航行したと報じられている。これらの船はトランプ大統領が封鎖を命じた数時間後にベネズエラの港を出航した。尿素、石油コークスおよび石油関連製品を輸送する3隻の船はホセ港を離れアジアに向かった。関係者によると、ベネズエラ政府はトランプ大統領の脅威に対抗して、この船舶に護衛を付けたという。ベネズエラ国営石油会社(PDVSA)はこの日、声明を発表し「我々はエネルギー主権の保護、合法的貿易約束の履行、海上運営の保護に対する意志を再確認する」とし「原油輸出作業は正常に維持されている」と述べた。米国政府はベネズエラのタンカー護衛作戦を認識しており、さまざまな対応策を検討中だと伝えられている。ホセ港を離れた3隻の船は米国財務省の制裁対象船舶リストには入っていないと「ニューヨーク・タイムズ」が確認したと報じた。
ベネズエラの石油の最大の購入国である中国の王毅外相はこの日、ベネズエラのイバン・エドゥアルド・ヒル・ピント外相の要請で行われた電話で「中国はすべての一方的な嫌がらせに反対し、各国の主権・民族の尊厳の保護を支持する」と述べ「(両国は)戦略的パートナーであり、相互信頼、支持が両国関係の伝統だ」と語った。
米国が9月2日、カリブ海で麻薬取り締まりを理由に船舶への攻撃を開始し、ベネズエラ政権の交代を圧迫して以来、中国は外務省の報道官を通じて国際法の遵守を促し、間接的に米国に自制を示唆した。中国外相が直接出てくるのは初めてだ。ベネズエラの石油販売の約80%は中国の民間業者が購入している。
マドゥロ大統領はアントニオ・グテーレス国際連合事務総長に電話し介入を促した。グテーレス事務総長はマドゥロ大統領に「加盟国が国際法を遵守し、緊張を緩和する必要性」を強調したと国連側は明らかにした。
トランプ大統領の西半球優先主義の試金石となったベネズエラ
米国は9月初め以降、カリブ海など中南米沿岸で海軍力を動員し麻薬密売船舶として、これまでに25回攻撃を行い、少なくとも95人が死亡した。ベネズエラとコロンビア、メキシコなどは攻撃を受けた自国の船舶は漁船などで麻薬とは無関係だと抗議してきた。米国はまたカリブ海に最大の空母であるジェラルド・R・フォード、3隻の駆逐艦、1万5,500人の兵力を展開し、ベネズエラを狙っている。トランプ大統領は先月中旬にベネズエラに対する中央情報局(CIA)の秘密工作を承認し、地上攻撃も示唆した。マドゥロ政権崩壊を狙う米国のこのような圧力は、トランプ政権に入って本土および周辺地域を優先する対外政策の転換に伴うものだと分析されている。トランプ政権は4日に発表した国家安全保障戦略で「米国は西半球での優位を回復し、我々の本土と地域全体の主要地形に対するアクセスを保護するためにモンロー主義を再確立し、実行する」とし「非西半球の競争者が我々の半球に軍隊やその他の脅威的能力を配備したり、戦略的に重要な資産の所有・管理を許可しない」と誓った。
米国はバラク・オバマ前政権以降、対外政策の優先順位を中国抑制に置き、インド太平洋地域を最も重視する対外戦略を展開してきたが、トランプ政権は今回アメリカ大陸の西半球でより重視する国家安全保障戦略に大きく転換した。トランプ政権はベネズエラで反米政権を排除し、友好的な親米政権の樹立が西半球優先主義の実行の第一の課題となった。米国はベネズエラに反米社会主義を標榜したウゴ・チャベス政権が入った1990年代初頭以来、ベネズエラの政権交代を追求してきた。
トランプ政権の今後の対応
トランプ大統領が今回命じた封鎖では対象が一旦、制裁タンカーに限定され、部分的な封鎖と見なされている。このためトランプ政権内では今回の封鎖執行を軍が主導すべきか、治安機関が執行すべきか混乱が生じている。軍事力を利用した外国に対する封鎖は国際法的に戦争行為に該当し、軍が介入する。海上封鎖には安保理の承認や交戦状態が求められる。これまで米国が実際に執行した海上封鎖は1962年のキューバ海上封鎖が最後だった。米国治安機関が封鎖を執行しても、タンカーを護衛するベネズエラ海軍と衝突すれば、米軍の介入で激化する可能性が高い。ベネズエラでも市民はベネズエラの石油を掌握しようとするトランプ大統領の意図に驚愕し、軍事力を動員して米国に対抗しようとするマドゥロへの支持が高まっていると「ニューヨーク・タイムズ」は伝えた。トランプ大統領は封鎖を命じながら「過去に米国で盗まれたすべての石油、土地、資産を返してもらうまで封鎖を解除しない」と述べた。ベネズエラは1976年に石油産業を国有化し、ウゴ・チャベス政権以降は西側石油会社の権益を事実上剥奪した。
米国はベネズエラ海軍がタンカーを護衛すれば、この地域に配備された艦船から発進した武装ヘリコプターを利用して船舶を拿捕する可能性が高いと「ニューヨーク・タイムズ」は伝えた。米国はすでに先週この方法で船舶を拿捕した。
下院軍事委員会のアダム・スミス民主党議員は「トランプ大統領はマドゥロ大統領が、最終的に屈服すると考えている」とし、「しかし、彼らが船舶を護衛し、我々が彼らを捕まえようと戦闘を繰り広げる別のシナリオがある」と懸念を示した。















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