
米国務省は高市早苗首相の就任後、日本政府内から「核兵器を保有すべきだ」との公開発言が出ていることについて「日本は核不拡散の世界的リーダーだ」と述べ、くぎを刺した。最近、首相官邸の幹部が核兵器保有を主張し、中国や北朝鮮などの反発が強まるなか、事実上、米国が自ら「核不拡散」を前面に打ち出した形だ。
しかし、小泉進次郎防衛相はこの件について「全ての選択肢を排除しない」と発言した。小泉氏は19日、東京近郊の神奈川県横須賀にある在日米軍基地を訪れ、米海軍の「シーウルフ」級原子力潜水艦などを視察した。
高市首相が先月7日の「台湾有事への関与」を示唆する発言を行い、その余波で中国との神経戦が続くなか、日本の核兵器保有をめぐる論争は今後も続きそうだ。
●北・中の反発に米「日は核不拡散のリーダー」
21日付の「朝日新聞」などによると、米国務省は日本の核兵器保有に関する日本メディアの質問に対し「日本は核不拡散や核軍備管理の推進において世界的なリーダーであり、重要なパートナーだ」と回答した。さらに「日米同盟はインド太平洋の平和と安定の礎であり、米国は日本を含む同盟国を守るため、世界で最も堅固で信頼できる現代的な核抑止力を維持する」と強調した。関連する論争の拡大を警戒したものと分析される。
これに先立ち、名前が明かされていない首相官邸の安全保障政策担当の幹部は18日、私見であることを前提に取材陣に対し「我々(日本)は核兵器を保有すべきだと考えている」と述べた。北朝鮮・中国・ロシアの核の脅威が高まるなか、米国の核抑止力だけを信じられないという趣旨だ。先月の高市首相による「非核三原則」(核兵器を作らず、持たず、持ち込ませず)の再検討示唆とも相まって、日本が米国の戦術核再配備など「核オプション」を持とうとしているのではないかとの懸念が出ている。
現在、核兵器不拡散条約(NPT)体制のもとで核兵器の保有が認められているのは、米国、中国、ロシア、英国、フランスの国連安全保障理事会5常任理事国のみである。日本が核兵器を保有することになれば、韓国や台湾など周辺国も核開発に動き出す「核ドミノ」現象が起きる可能性がある。
中国、北朝鮮などは激しく反発している。中国外交部の郭嘉昆報道官は19日、「日本の右翼保守勢力が軍国主義を復活させ『再軍事化』を加速させようとする野望を示している」と非難した。北朝鮮の「朝鮮中央通信」も21日、外務省日本研究所長名の談話を通じて、日本の核武装論は「極めて挑発的な妄言であり、人類に大災厄をもたらす」と主張した。また、日本を「侵略戦争の導火線に火をつけかねない不良国家」とまで呼んだ。これについて、長年にわたり国際社会の規範に反して核兵器の開発を続けてきた北朝鮮が、こうした談話を出すのは不適切だとの見方も出ている。
●日防衛相「全ての選択肢を排除せず」
しかし、小泉防衛相は19日の記者会見で、政府の「非核三原則」再検討について「国民の生命と平和な暮らしを守るために何が必要なのか、全ての選択肢を排除せずに議論する必要がある」と述べた。核の持ち込みなどを禁じた「非核三原則」は、1967年に佐藤栄作首相(当時)が表明して以来、日本の核政策の根幹となってきた。その再検討の可能性を所管大臣自らが示した格好だ。
小泉防衛相は横須賀の在日米軍基地視察の際、海上自衛隊の潜水艦「せいりゅう」もあわせて見学した。与党・自民党と連立与党の日本維新の会は、今年10月の連立合意文書で「次世代の動力を活用した垂直発射システム(VLS)搭載潜水艦を保有する」と明記した。これについて、核推進潜水艦の導入を念頭に置いているとの見方が多い。
小泉防衛相は先月6日には、ドナルド・トランプ米大統領が韓国の核推進潜水艦の建造を承認したことにも言及した。小泉氏は「周辺国は皆、核推進潜水艦を持っている」と述べるなど、核潜水艦の必要性を重ねて示唆した。

















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