
人工知能(AI)ブームによりメモリ半導体市場が好況に沸く中、メーカー各社は旺盛な需要にもかかわらず、生産能力の拡大には慎重な姿勢を崩していない。過去の不況期に経験した大規模赤字の記憶が、いまも経営判断に影を落としているとの分析だ。
「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」は11日(現地時間)、「世界はより多くのメモリチップやハードディスクを必要としているが、メーカーが生産ペースを抑えるのには十分に合理的な理由がある」と報じた。
好不況を繰り返してきたメモリ業界は、現在AI向け需要の急増により、NANDフラッシュ、DRAM、ハードディスクなど主要製品で需要が供給を大きく上回り、過去最大級の好況を迎えている。
供給不足は価格上昇につながり、企業収益も急拡大している。マイクロンは先月、過去最高の四半期売上高と営業利益を記録し、サムスン電子も今月8日、第4四半期の営業利益が前年同期比で約3倍に増える見通しを示した。
◆2023年の赤字経験が投資拡大を抑制
通常、供給不足と価格上昇が続けばメーカーは生産拡大に踏み切るが、今回は例外だ。今年、設備投資を拡大する予定なのはシーゲイトのみで、それも売上高に対する設備投資比率を平均水準の約4%に維持する目的にとどまる。
調査会社ファクトセットによると、サンディスクは6月終了の会計年度で売上高が44%増加する見込みだが、設備投資の増加率は18%にとどまると予想されている。
背景には、価格下落による赤字と株価暴落を何度も経験してきた業界構造がある。直近では2023年に、マイクロン、ウエスタン・デジタル、シーゲイト、SKハイニックスの主要各社がそろって年間営業損失を計上した。
最近の株価急騰も、企業が過去のように無理な増産に走らない要因となっている。マイクロン、シーゲイト、ウエスタン・デジタルの株価は昨年2倍以上に上昇し、S&P500指数構成銘柄の中でも最大級の上昇率を記録した。2024年2月にウエスタン・デジタルから分社したサンディスクは、株価が約10倍に急騰。SKハイニックスも直近3カ月で88%上昇している。
◆今回は構造的需要増の可能性も
一方で、今回は従来と異なる局面に入っている可能性も指摘されている。エヌビディアやAMDが設計するAIコンピューティングシステムは、稼働に大量の高性能DRAM、ハードディスク、SSDを必要とするためだ。
バーンスタインのアナリスト、マーク・ニューマン氏はこれを「データ爆発」と表現し、「NANDフラッシュやハードディスクなどの総ストレージ出荷量は、今後4年間で年平均19%成長する」と予測している。これは過去10年間の平均成長率14%を大きく上回る。
エヌビディアとAMDが製品サイクルを高速化している点も需要拡大を後押しする。エヌビディアが先週公開した「ルービン(Rubin)」GPUは、昨年発売の「ブラックウェル」チップと比べ、メモリ帯域幅が約3倍に拡大している。
こうした需要の源泉となっているのが、ビッグテック各社の設備投資だ。昨年、アマゾン、グーグル、マイクロソフト、メタの設備投資額は計4,070億ドル(約65兆円)に達した。専門家は今年、この金額が約5,230億ドル(約83兆円)まで拡大すると見込んでいる。
モルガン・スタンレーのアナリスト、ムーア氏は「これほど強い需要が続くなら、今回の上昇局面は数年にわたって持続する可能性がある」との見方を示している。
















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