
ドナルド・トランプ米大統領が出席したホワイトハウスの記者晩餐会で銃撃事件が発生した。トランプ氏を標的としたとみられる今回の事件を巡り、イラン情勢への影響について様々な分析が出ている。
トランプ氏は事件発生直後、「イランとの関係はないとみられる」と述べており、現時点で今回の事件とイラン情勢を直接結びつける明確な材料は乏しい。ただ、トランプ氏に対する過去の暗殺未遂事件を踏まえると、今回の事件がイラン情勢を巡る世論に一時的な変化をもたらし、11月の中間選挙の結果にも影響を及ぼす可能性は否定できない。いわゆる「バタフライ効果」を生むとの見方も出ている。
2月28日に米国がイスラエルとともにイランへの軍事作戦を開始して以降、国内世論の悪化が続いた。トランプ氏はイラン情勢に対する反対論が優勢となる状況の転換を図ったが、ガソリン価格の上昇が避けられないとの見方が広がる中で、世論は次第に冷え込んだ。実際、軍事作戦開始後、トランプ氏の支持率は就任後最低の33%まで低下し、中間選挙を前に共和党内では敗北感も広がっていた。
一方で今回の銃撃事件は、イラン情勢に集中していた世論の関心をそらす結果となった。トランプ氏にとっても、イラン対応をきっかけに離れた熱狂的支持層「MAGA」を含め、保守層の支持を再び結集する契機となる効果が期待される。
イラン「時間は味方」との認識に変化の可能性
トランプ氏は、自身の命を狙った銃撃事件を契機に、支持率の重荷となっているイラン情勢を巡る流れを変え、むしろ有利な状況を生み出す可能性がある。

早期停戦を求める圧力が弱まった状態でイランとの交渉に臨むことになれば、イランのペースに引きずられるのではなく、米国が望む方向へ交渉を主導できる。結果として、時間的制約をあんまり受けずにイラン対応を進められるとみられる。
これまで時間との戦いが自国に有利に働くとみてきたイランも、米国内のこうした世論動向を注視しながら対米交渉に臨むとされる。こうした状況は、米国による対イラン圧力の強化にも追い風となる可能性がある。
一方、イスラム革命防衛隊(IRGC)系の準国営タスニム通信は事件発生直後の26日、「今回の事件はトランプ氏のやらせのような芝居だ」と伝えた上で、「トランプ氏が仕組んだショーのように見える複数の兆候がある」として、自作自演の疑いを指摘した。
困惑する民主党、中間選挙前の総攻撃に支障
イラン情勢で悪化していた世論を中間選挙まで維持し、選挙戦での優位につなげることを狙っていた民主党の戦略に影響が出る可能性がある。
民主党はイランへの軍事作戦開始以降、トランプ氏と共和党に対する批判を強めてきた。ただ、今回の銃撃事件を受けて、従来のようにトランプ氏への追及を続けることは難しくなっている。すでに米大統領が標的となった状況の中で、民主党が攻勢のトーンを調整しなければ、かえって世論の反発を招き、逆効果となる可能性があるためだ。
トランプ氏は、大統領選の選挙運動期間中だった2024年7月、米ペンシルベニア州バトラーで演説中に銃撃を受けた。容疑者はその場で米大統領警護隊(シークレットサービス)により射殺された。トランプ氏は弾丸が耳をかすめ出血する中でも拳を突き上げ、「戦おう」と叫んだ。この場面は、その後の大統領選勝利を象徴する出来事として広く受け止められた。
結束を強める熱狂的支持層
トランプ氏の命を狙った銃撃事件が、同氏を再び危機から救うとの見方の一部は、すでに現実となりつつある。熱狂的支持層は今回の事件を再び「神の介入」と位置づけ、結束を強めている。

SNS上では、執務室に座るトランプ氏の背後にイエス・キリストが立ち、両肩に手を置いているとする合成画像が急速に拡散している。支持者の間では「悪の勢力が日々攻撃しているが、私たちにできるのは彼のために祈ることだ」といった発言も出ており、盲目的ともいえる支持が広がっている。
トランプ氏はバトラーでの選挙演説中に起きた暗殺未遂事件について、「神が米国を救うために私の命を救った」と述べ、自身の生還を大統領就任に向けた神の摂理だと位置づけた。こうした主張が広く浸透すれば、同氏に向けられている「侵略者」といったイメージも薄れる可能性がある。













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