
長らく下落傾向にあったイーサリアム(ETH)の価格が、1,385ドル(約20万円)まで反発の兆しを見せている。イーサリアムのブロックチェーンネットワークにおける大規模なアップグレードに対する期待感があるとされ、これが価格上昇を後押ししたとみられる。
10日、グローバル暗号資産(仮想通貨)取引所「バイナンス」によると、イーサリアムは9日、一日で約25%急騰し、2,220ドル(約32万3,775円)を突破したという。2,200ドル台まで回復したのは約2カ月ぶりとなる。
今回の反発は、7日に実施された大規模アップグレードプロジェクト「ペクトラ(Pectra)」の影響によるものと分析されている。今回のアップグレードにより、イーサリアムネットワーク上での取引処理がより円滑に進むようになり、特に予測可能性を重視する機関投資家にとっては好材料となったと説明されている。
また、取引の正当性を確認する「バリデーター」が、最大2,048個のイーサリアムをステーキング(預け入れ)できるようになったことも大きな変化として挙げられる。これまでイーサリアムのバリデーターは、年利3〜5%相当のイーサリアムを検証作業の報酬として受け取るため、32個のイーサリアムを担保として預け入れていた。ステーキングとは、ブロックチェーンネットワークに一定期間資産を預け入れ、報酬を得る仕組みを指す。イーサリアムを大量に保有する機関が、一つのアカウントでより多くの資産を効率的に運用できるようになった。業界関係者の間では、「今回の変更により、機関投資家にとっての参入障壁が下がり、複利ベースの収益最大化が可能になる」と期待されている。
暗号資産アナリストのアミール・タハ氏は「9日にイーサリアム価格が1,900ドル(約27万円)を突破する直前、バイナンスから約8万5,000個のイーサリアムが出金された」と指摘し、「ここ数カ月で最大規模の出金だ」と述べた。さらに、同氏は「イーサリアムの大量出金とほぼ同時に、ステーブルコインのテザーも10億ドル(約1,458億2,533万円)相当が新規発行された」と述べ、「これは機関投資家によるイーサリアム買い入れの動きと解釈できる」と分析した。
一方で、イーサリアムがビットコインと比較して極端な割安な水準にあるとの分析も出ている。暗号資産分析プラットフォーム「クリプトクアント(CryptoQuant)」は、SNS「X」を通じて「イーサリアムがここまで割安になったのは2019年以来初めてだ」とし、「過去の事例を見ると、この水準に達した後は急騰する傾向があった」と指摘した。