
米連邦政府がついにシャットダウン(業務一時停止)に入った。ドナルド・トランプ前大統領の1期目政権だった2018年12月以来、7年ぶりとなる。
米議会は9月30日深夜までに2026会計年度予算案や暫定予算案(CR)の可決に失敗した。上院では共和党案による暫定予算を採決に付し、11月21日まで7週間の資金支出を認める提案が出されたが、賛成55対反対45で否決された。予算案を通すには60票が必要で、閾値に届かなかった。
シャットダウン開始により、多くの連邦政府職員が非必須人員として無給休職となる。必須に指定された職員は出勤義務があるが、給与は支払われず、現場では病気休暇などを利用して勤務を避ける動きも出ている。市民生活への影響は避けられない。
特に空港施設など職員依存度の高い分野では混乱が不可避となる。米運輸省によると、連邦航空局(FAA)職員の4分の1にあたる1万1000人以上が無給休職となる見通しだ。一方、航空管制官や保安要員は無給で勤務を続ける必要がある。2018年末から2019年初めの35日間のシャットダウンでは、保安検査場の混雑や管制・税関人員不足で主要空港の運営に深刻な影響が出た経緯があり、今回も旅行関連業界に大打撃が予想される。米国旅行協会(USTA)は長期化すれば週当たり10億ドル(約1,470億円)の損失になると試算している。
一方で、連邦捜査局(FBI)や麻薬取締局(DEA)、沿岸警備隊などの法執行機関は業務を継続する。連邦裁判所は手数料収入などで数週間は機能を維持できる見込み。米国郵政公社(USPS)は自主財源で運営されているため、通常通りサービスが続くとみられている。
米労働省は、労働統計局(BLS)が発表する雇用統計などが遅延、もしくはデータ品質に問題が生じる可能性を指摘した。商務省傘下の経済分析局(BEA)の報告書も停止の恐れがあり、財務省による為替操作国報告書の公表も不透明な状況だ。
金融市場にも影響が表れた。ドル指数(DXY)は9月30日の98台から10月1日には97.5台へ下落し、1週間で約1%の値下がりとなった。10年物米国債利回りは4.168%へ上昇した。金価格は一段高を記録し、現物価格は一時トロイオンス当たり3875.53ドル(約57万円)に到達、12月限先物は3900ドル(約57万4,000円)を突破した。米政府への信頼低下やインフレ懸念が背景とされる。
一方、株式市場の動きは比較的落ち着いていた。S&P500は0.41%、ナスダック総合は0.30%上昇で取引を終えた。ただし株価指数先物は下落しており、市場心理には不安が残る。専門家は「政府シャットダウンは通常、株式市場への直接的影響は限定的」とし、過去トランプ政権期の35日間の停止中にもニューヨーク市場が上昇したことを例に挙げている。
市場はシャットダウン自体よりも、雇用統計の未公表による不透明感や、連邦職員の追加解雇が労働市場に与える影響に注目している。
さらに長期化の懸念も浮上する。ニューヨーク・タイムズによると、民主党のチャック・シューマー上院院内総務はシャットダウンを前にオバマケア(ACA)資金の延長を強く要求した。彼は「保険料が月400ドル(約5万8,000円)、500ドル(約7万3,000円)、600ドル(約8万8,000円)と上がれば、国民は大統領を責任者とみなすだろう」と警告。与野党の対立が続けば、早期解除は一層困難になると見られている。
コメント0