
ハワード・ラトニック米商務長官が米国内の半導体生産を拡大するため、台湾政府に対し生産を50対50で分割する案を提示したことを受け、台湾では連日反発の声が高まっている。
ラトニック長官は先月28日(現地時間)、米メディアのインタビューで「私と現政権の目標は半導体製造拠点を大幅に国内へ誘致し、自国チップを生産することだ」と述べ、「台湾に『我々が半分、あなたたちが半分を生産して50対50で分けよう』と提案した」と明かした。
台湾はこれに先立ち、中国による軍事的圧力に対抗するため、世界最大のファウンドリ企業TSMCを中心に約230兆ウォン(約24兆6,800億円)規模の対米投資計画を発表していた。しかし米国側はこれを不十分と判断し、台湾の生産能力の半分を米国内へ移すよう求め始めた。
さらに、半導体サプライチェーンで台湾が担う圧倒的な地位が中国の軍事的野心を抑止してきたとされる「シリコンシールド」理論についても、米側はその効果を過小評価し、むしろ現状が米国のリスク要因になっていると主張している。ラトニック長官は「世界の先端半導体の9割以上を台湾が生産しながら、米国から遠く、中国と隣接している点が懸念される」と強調した。

「米国内での製造拠点確保によって安全保障リスクを軽減する」ラトニック長官の発言は台湾社会に大きな衝撃を与えた。鄭麗君(チョン・リーチュン)行政院副院長は記者会見で「台湾は半導体を50対50で分割するとの米国側の提案に同意したことは一度もなく、今後も同意しない」と断言した。TSMCが協議に関与したかとの質問には「そうではない」と答えた。
頼清徳(ライ・チンテ)総統も10月7日の声明で「半導体エコシステム全体の利益の約8割は米国に帰属しており、依然として米国がリーダーである」と述べ、米国側の懸念をなだめる姿勢を見せた。だが台湾国内では「米国の要求は国を売るのと同じだ」との批判が広がっている。
国民党の朱立倫主席は「TSMCを米国に移転することは台湾のシリコンシールドを崩壊させる行為だ」と非難し、「誰にも台湾を売り渡す権利はない。政府は国家を犠牲にしてはならない」と強調した。台湾大手電子機器メーカー、ペガトロンのトン・ツシェン会長も「台湾の半導体競争力は数十年にわたる戦略、人材、資本の蓄積によるものであり、政治的思惑で揺るがしてはならない」と警鐘を鳴らした。

米国の要求する50対50の生産モデルは、現実的に不可能だとの指摘も多い。現在、米国内での半導体生産比率は10%にも満たず、台湾の供給網は数十年にわたり築かれた堅固なエコシステムに支えられている。こうした実情を踏まえ、米国案は対中圧力を目的とした交渉カードにすぎないとの見方も出ている。
台湾政府は企業の自主的な投資拡大を基盤に、政府が金融保証を行い、米国側が土地・インフラ・ビザ支援などを担う共同育成モデルを提案中だ。鄭副院長は第5回交渉後、「米国側はこの方式に前向きな反応を示した」と述べたが、トランプ大統領と政権がそれを受け入れるかは依然として不透明である。
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