
東北アジアの外交環境が大きく揺れるなか、来年1月に調整されていた日中韓首脳会議は、最終的に開催が見送られることになった。日本側が会談に前向きな姿勢を示していたにもかかわらず、中国側が応じなかったためで、日中間の緊張があらためて浮き彫りとなった形だ。
背景には、日本が台湾情勢に関連して「自衛隊の関与」へ言及したことが、中国の明確な「越えてはならない一線」に触れたとの見方がある。中国は台湾を国家として不可分の存在と位置づけており、域外の関与を強く警戒している。
複数の専門家は、日本側の発言が中国にとって直接的な刺激となったと指摘する。最近では、中国外交官が人民服姿で日本側を事実上無視するような場面も報じられ、双方の関係悪化を象徴する動きとして受け止められている。
一方、日中の対立が強まるなか、韓国に対しても独自の圧力と誘導が働き始めている。中国は日本に厳しい姿勢を示す一方で、韓国との関係では比較的柔らかい発信を続けており、領土問題をめぐる従来の公式姿勢に濃淡が出たとの分析もある。中国が戦略上、韓国との接点を意図的に広げようとしているとの指摘もある。

日本側では、台湾発言をめぐる支持率への即時の影響は限定的とみられるものの、緊張が長期化した場合の経済的負担を懸念する声は少なくない。訪日中国人が全体の3割を超えるなか、水産物を含む報復措置が本格化した場合、観光・流通産業を中心に影響が広がる可能性がある。国内の保守系勢力は、こうした対立構図を政治的資源として捉え、より強硬な姿勢を鮮明にしている。

注目されるのは、こうした情勢の中で韓国がどのような外交方針を選択するかという点だ。専門家の間では、韓国は米中日のいずれにも過度に傾かない「中間戦略」を維持しようとしているとの見方が強い。台湾有事への関与に慎重な姿勢も、感情論ではなく安全保障上の現実的な判断によるものだとされる。
今回の首脳会議の中止は、単なる日程調整にとどまらず、東北アジアの力学が再編されつつある兆候とも指摘されている。日中の対立構図が固定化しつつあるなか、韓国は外交的な余地を確保しつつ、地域情勢の行方を慎重に見定める姿勢を強めている。














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