トランプ大統領「ベネズエラ地上攻撃は間もなく開始…コロンビアも空爆対象」
米議会は戦争中断の採決へ
トランプ大統領の「麻薬密輸犯の恩赦」も論争に

ドナルド・トランプ米大統領とピート・ヘグセス米国防長官は2日、麻薬撲滅を名目にベネズエラ近海で実施してきた空爆作戦を、地上作戦へと拡大する方針を明らかにした。この過程で、ベネズエラの隣国コロンビアも空爆の対象となる可能性があることを示唆した。主権侵害を巡る議論がある中でも、中南米で反米色の強い左派政権に対する軍事的圧力を維持する姿勢を鮮明にしたとの見方が出ている。
一方、米議会ではトランプ政権のこうした動きを食い止める超党派の動きが広がっている。与党・共和党のランド・ポール上院議員、トーマス・マッシー下院議員、ホアキン・カストロ下院議員に加え、野党・民主党のチャック・シューマー、アダム・シフ、ティム・ケイン各上院議員とジム・マクガバン下院議員は同日、議会の承認なしにベネズエラへの敵対行為に踏み切ることを禁じる「戦争権限決議案(War Powers Resolution)」を上下両院にそれぞれ提出した。1973年に導入されたこの決議は、大統領の独断による軍事行動を抑制するための議会のチェック機能とされている。
トランプ・ヘグセス両氏「ベネズエラに近く地上攻撃」
トランプ大統領は2日、ワシントンのホワイトハウスで開かれた閣議で、攻撃は地上で行う方がはるかに容易だと述べ、我々は相手の動向をすべて把握しており、地上攻撃を間もなく開始すると繰り返し強調した。
さらに「コロンビアがコカインを生産していると聞いている。そうした行為で米国に麻薬を売る者は、誰であっても攻撃の対象になる」と述べ、空爆対象国を拡大する意向も示した。「ニューヨーク・タイムズ(NYT)」によると、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は最近、米国による地上部隊投入や精密攻撃に備え、滞在先や寝室、携帯電話、警護要員を何度も変更しているという。
ヘグセス国防長官も、麻薬船を攻撃し、密売人を海の底に沈める作戦を始めたばかりであり、必要であれば陸上でも同様の対応が取られると述べ、地上戦を検討していることを示唆した。
また両氏は、米国がベネズエラ船を撃沈する過程で、一部の生存者まで殺害したとされる「二次攻撃」の疑惑について強く否定した。この問題が浮上して以降、両者が同時に反論に踏み切ったのは今回が初めてとなる。
トランプ大統領は「私は二次攻撃について全く知らなかった。関与していない」と明らかにし「こうした攻撃によって、米国内で麻薬による死亡者が減っている」と述べ、作戦の正当性を主張した。
「ワシントン・ポスト(WP)」が「生存者を含む全員殺害」の命令を出した人物として指摘したヘグセス長官は、当時の現場指揮官であるフランク・ブラッドリー米統合特殊作戦コマンド司令官(海軍中将、現・特殊戦司令部司令官=海軍大将)に責任を転嫁するような姿勢を見せた。ヘグセス長官は、一次攻撃まではリアルタイムで見届けていたものの、その後は別の会議に移動し、「数時間後になって、ブラッドリー中将が権限を行使して船を沈め、脅威を排除したと知った」と説明した。
トランプ、麻薬密輸犯の恩赦も物議
トランプ大統領によるベネズエラへの空爆拡大を抑制しようとする上院議員4人は声明で「大統領の独断による軍事行動は、米軍の命を不必要に危険にさらす、巨大で高くつく過ちだ」と批判した。戦争権限決議案は、上院と下院それぞれで過半数の賛成を得れば可決される。その後、大統領が拒否権を行使した場合、両院でそれぞれ3分の2以上の賛成がなければ、大統領の行動を阻止できない。
こうした中、トランプ大統領が麻薬流入の防止や関連組織の壊滅を理由にベネズエラ近海で空爆を続ける一方で、麻薬密輸の罪で米連邦刑務所に服役していたホンジュラス前大統領のフアン・オルランド・エルナンデス(57歳)氏を1日に恩赦したことも、論争を呼んでいる。
右派の国民党に所属し、2014年1月から2022年1月まで政権を率いたエルナンデス前大統領は、退任直後に逮捕され、同年4月に米国へ身柄を引き渡された。米検察は、同氏が在任中にコロンビアやベネズエラなどから麻薬を調達して米国内に密輸し、麻薬密売組織から受け取った賄賂を大統領選の資金に充てていたとみている。昨年6月には、米連邦裁判所で禁錮45年の実刑判決を言い渡された。














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