
トランプ米政権は人工知能(AI)競争を「21世紀を定義する戦い」と位置づけ、巨大技術企業(ビッグテック)への全面的な支援に乗り出している。トランプ政権は発足後、「ペイパル」の創業者出身であるデービッド・サックス氏らIT業界の専門人材を起用し、AI産業育成のための投資計画を発表する一方で、AIの安全に関連する規制を大幅に撤廃した。
一方で、米国社会では急速に発展するAIがもたらす経済的・社会的変化に対する大衆の不安感が高まっている。米連邦議会の超党派からもAI規制を求める声が上がり、11月の中間選挙における最大の変数として浮上する兆しを見せている。
データセンター建設による電気料金値上げへの懸念
まず、AIモデル稼働の中核インフラとされるデータセンターの建設過程で摩擦が生じている。トランプ政権は就任初期に「オープンAI」や「オラクル」などのビッグテックが参加する5,000億ドル(約77兆円)規模の「AIインフラ投資プロジェクト」を発表し、米国全域でデータセンターの建設を推進している。
しかし、近隣地域ではデータセンターが「迷惑施設」とみなされ、地域住民の反発を招いている。住民らは、データセンターが地域経済に寄与する代わりに膨大な水と電力を消費し、公共料金の暴騰を引き起こす元凶になっていると批判している。
米国各地では建設反対デモが激化している。研究機関「10a Labs」の報告書によると、昨年4月から6月にかけて米全土で980億ドル(約15兆900億円)規模のデータセンタープロジェクト20件が、地域住民の反対によって頓挫した。昨年11月のバージニア州およびニュージャージー州の知事選挙でも公共料金問題が争点となり、データセンター企業に電力インフラの改善費用を負担させる公約を掲げた民主党候補が当選した。
雇用代替への不安と国民の悲観論
各種世論調査では、米国民がAIの発展が社会全般に広がることに強い恐れを抱いていることが明らかになっている。特にAIが事務職を中心に雇用を代替するという見通しが相次いで提起され、不安感はますます高まっている。
昨年8月の「ロイター通信」と「イプソス」による調査では、71%の回答者が「AIがあまりにも多くの人を永久に失業させる」と懸念していることが判明した。10月の「ピュー・リサーチ・センター」の調査では、米国人の50%が日常生活でのAI使用増加に対し「期待感よりも懸念が大きい」と回答し、「期待感が大きい」と答えた10%を大きく上回った。
ブルッキングス研究所の上級研究員であるダレル・ウェスト氏は、米政治専門メディア「ポリティコ」に対し、「株式市場が好況であっても失業率が上昇し、人工知能が雇用を奪うのであれば、一般の米国人にとっては好ましいことではない」と語った。
規制を巡る米政界の亀裂
中間選挙を前にAIに対する大衆の不安感が高まる中、米政界でも無分別なAI開発を規制すべきだという声が上がっている。
バーニー・サンダース上院議員(バーモント州)は昨年12月に「CNN」に出演し、「技術は人間の生活を改善するものであるべきだ。イーロン・マスク氏やマーク・ザッカーバーグ氏、ジェフ・ベゾス氏らを今以上に裕福にするためのものであってはならない」として、データセンター開発の一時中断を主張した。また、マーク・ケリー上院議員(アリゾナ州・民主党)は、AI企業に新たな税を課し、その収益を失職者の再教育に充てるべきだと提案した。
共和党陣営内でもAI規制を求める声がある。白人労働者が主軸となった「MAGA(Make America Great Again)」をはじめとする共和党関係者は、トランプ米大統領が州政府のAI規制権限を制限する行政命令に署名したことを受け、「ビッグテックの寄付者に屈服した」と批判した。
フロリダ州のロン・デサンティス知事は先月12日、「フロリダ住民が進行中のAI革命によって犠牲にならないようにするのが州政府の責任だ」と強調した。デサンティス氏は州内のデータセンター建設反対などを掲げ、共和党内の代表的なAI規制論者として浮上している。
シリコンバレー側はこうした世論の変化を感知し、AI議論の主導権を握るために総力を挙げている。昨年8月には「パランティア」共同創業者のジョー・ロンズデール氏らビッグテック関係者が主導し、AI開発を支持する超党派の政治家を支援するスーパーPAC(政治活動委員会)「リーディング・ザ・フューチャー」が設立された。
米外交問題評議会の上級研究員であるレベッカ・リスナー氏は、「企業がAIをより攻撃的に導入するようになれば、雇用の減少は将来的な政治問題になる可能性が高い。米国は近い将来、AIに対する本格的なポピュリズム的反発に直面することになるだろう」との展望を示した。














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