
北朝鮮がロシアの戦争に兵力を派遣していた事実が確認され、内部で共有されてきた選抜基準の実態が明らかになっている。公式発表以前から流布していた派兵説は偶発的な噂ではなく、世論の方向付けを目的として意図的に拡散された情報だったとされる。
実際の選抜過程では、貧困層出身の若者が優先的に選ばれていた。農場、炭鉱、軍需工場に属する家庭の子女が最上位の対象とされ、平壌や主要都市の幹部子弟は当初から除外されていた。山間部で育ち、外部情報との接触が乏しく、思想統制が浸透しやすい層が中心だった。家族が体制上の問題にならないと判断されれば、戦死による政治的負担が生じにくいという基準が運用されていた。
ロシア到着後に確認された兵士の姿は、この選別基準を裏付けるものだった。体格は痩せ細り、家族支援の背景を持たず、訓練過程で障害が生じる可能性を前提とする階層が多数を占めていた。北朝鮮メディアは戦死者10人に英雄称号を付与し、金正恩総書記が涙を流したと報じたが、公開された事例の多くは戦闘成果ではなく自爆行為だった。
手榴弾の爆発で片腕を失った後、残った腕で再度自爆した22歳兵士の事例や、負傷後に銃で自ら命を絶ったとされる事例が紹介された。一方で、敵兵の制圧数や戦果に関する具体的な描写は一切示されなかった。

北朝鮮内部では、自爆が思想教育の帰結として位置付けられている。山間地域の下層階層は親の職業が世襲され、除隊後も炭鉱や農場に戻る運命に置かれる。その中で自爆は、家族を賤民的地位から解放する唯一の通路として注入されてきた。英雄称号は報償として包装され、「死が家族の未来を変える」という信念を強化する装置として機能している。
派兵された兵士12人のうち、多数が自爆で英雄になったという物語が公演全体を支配した点も象徴的だ。北朝鮮はこの狂信的空気を意図的に醸成している。数年続いた首領決死擁護の標語は、ロシア派兵以降さらに過激化し、自爆を賛美する内容が行事やメディアで反復されている。

金正恩総書記は過去に親族を含む多数の粛清を主導してきた人物でありながら、戦死者の遺体の前で涙を流す演出を通じて感情動員を図っている。抵抗力を持たず、外部世界を知らない階層のみを戦争に送り出す構造は、北朝鮮社会で一層固定化されつつある。
ロシアとの連携が進み派兵規模が拡大すれば、この選別方式はさらに強化される可能性が高い。忠誠の象徴が拡張されるほど、北朝鮮社会は通常の価値基準から乖離し、自爆を美化する宣伝は加速している。内部からも「狂信者の地になった」との声が上がる中、若い世代には選択肢ではなく、死をもって忠誠を示す圧力のみが残されつつある。















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