
韓国のユン・ソンニョル政権は発足当初から、歴代の進歩政権でさえ国民感情やいわゆる色分け論を理由に踏み込めなかった北朝鮮メディア開放に対し、比較的積極的な姿勢を示してきた。2022年、統一省は大統領業務報告を通じ、メディア・出版・放送を段階的に開放し、民族的同質性の回復を図るとの構想を提示した。これは対北政策における韓国政府の自信を象徴的に示す事例と受け止められた。
こうした路線は、2025年に発足したイ・ジェミョン政権下でさらに加速している。同年7月、イ・ジェミョン大統領は記者会見などで対北政策転換の可能性に言及し、韓国政府はこれまで特殊資料として非公開扱いとしてきた北朝鮮の漫画や映画などの文化コンテンツについて、一般閲覧を認める方針を決定した。対北放送を中止する一方で、北朝鮮コンテンツの韓国内流通を認め、相互理解の拡大を狙う戦略とされる。

これと並行して、韓国政府は北朝鮮資料の分類基準を明確化するための制度整備にも着手した。韓国国会で検討が進められている関連法案には、仮称・北朝鮮資料審議委員会の設置構想が盛り込まれる予定で、政治思想などの機微な分野を除外する一方、文化分野に限ってはアクセス性を大幅に拡大する内容が柱となる。
政府の開放方針が具体化するにつれ、これまで統一関連の公論形成を理由に遮断されてきた北朝鮮ウェブサイトへの接続制限も、段階的に緩和されるのではないかとの観測が広がった。これに対し、韓国内のオンラインコミュニティでは即座に反応が見られた。北朝鮮サイトの掲示板を通じて韓国の発展を紹介しようとする動きや、金正恩国務委員長の比較的珍しい写真を用いた風刺的なミームを制作するなど、いわゆるオンライン空間での文化的な働きかけを示唆する声が相次いだ。

しかし、北朝鮮当局はこうした韓国のネット利用者の動きをすでに想定していた可能性がある。最近、北朝鮮は韓国側の開放措置が実現する前段階で、韓国発のIPアドレスを先制的に遮断し、外部情報の流入経路を徹底的に封鎖したとされる。
この即時的な対応をめぐり、韓国のネット上では「勘のいい北朝鮮がすでに扉を閉ざした」とする反応や、「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」といった表現がミームとして拡散している。韓国のネット利用者の間では、北朝鮮の過剰とも受け取れる警戒姿勢そのものを皮肉の対象とする空気も見られる。
専門家は、韓国政府が開放という選択肢を打ち出したものの、体制への影響を警戒する北朝鮮が先制的遮断で応じた以上、韓国と北朝鮮の間で実質的な情報交流が進展するまでには、なお時間を要するとの見方を示している。













コメント0