
一見すると敵対関係にある生物同士でも、生態系という大きな枠組みの中では調和を保っている。例えば、草や木を食べる草食動物は、種子を散布し、排泄物を肥料として提供する植物の協力者だ。草食動物を捕食する肉食動物は、動物の個体数を調整し、植物の絶滅を防ぐ役割を果たす。互いに脅威となる存在だが、実は生態系のバランスを維持するために不可欠な存在でもある。
人間はしばしばこの事実を無視し、大きな代償を払ってきた。米国アリゾナ州のカイバブ高原の事例がその典型だ。20世紀初頭、鹿を保護するために鹿の捕食者であるオオカミなどの肉食動物を全て駆除した結果、鹿の個体数が爆発的に増加し、生態系が崩壊した。穀物を食べるスズメを駆除したことで、さらに大きな被害を受けた例もある。スズメが害虫を捕食する役割を果たしていたことを見落としていた。
人間にとって非常に危険でありながら、意外にも恩恵をもたらす生物もいる。それが蛇だ。南アフリカ共和国のウィットウォーターズランド大学の研究チームは、南アフリカに生息するパフアダー(puff adder)が人間にとって重要な生物であるという研究結果を、最近、ネイチャー出版の『サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)』に発表した。
パフアダーは、アフリカで一般的に見られる毒蛇の一種で、特にネズミの天敵として知られる。パフアダーが最も活発に活動する時期は、まさにネズミの繁殖期と重なる。研究チームによると、この時期パフアダーは非常に積極的にネズミを狩り、1回の狩りで最大10匹を捕食するという。これにより、穀物を食い荒らすネズミの個体数を効果的に抑制している。さらに、ネズミが媒介する感染症の拡大も防いでいる。人為的な調整を必要とせず、ネズミが増えればそれを捕食するパフアダーも増加し、自然に個体数のバランスが保たれる仕組みだ。
ネズミを捕獲するための罠や殺鼠剤に多額の費用をかけられない発展途上国の農民にとって、パフアダーがもたらす経済的利益は大きい。アフリカの気候と環境に完全に適応したパフアダーは、この地域では猫以上に優れたネズミ捕獲者となっている。
もちろん、基本的に毒蛇であるため、咬傷による死亡事故の原因にもなり得る。しかし、毒蛇だからといって無条件に排除すれば、むしろ得るものより失うものの方が多くなる。蛇もまた生態系を構成する重要な生物であり、人間に知らず知らずのうちに恩恵をもたらしている。そのため、細心の注意を払いつつ、保護する必要がある。