
「中国の自動車産業には既に『恒大』のような存在がある」
最近、中国の自動車会社会長の発言で、中国不動産危機の象徴である不動産開発会社の恒大集団(エバーグランデ)が言及され、業界に衝撃が走った。
この警告的発言だけでなく、世界の電気自動車市場で首位に立った比亜迪(BYD)の大幅な値引き情報や、不正に出荷された「偽装中古車」の出現により、中国の自動車産業が深刻な構造的危機に陥っているとの指摘が出ている。
長城汽車の会長ウェイ・ジエンジュン氏は23日、中国メディア新浪財経とのインタビューで「一部の完成車メーカーは時価総額と株価の上昇にばかり熱中している」とし、「自動車産業には既に『恒大』が存在しているが、まだ(危機が)顕在化していないだけだ」と批判した。
無秩序な拡大により世界最大の負債(約443兆ウォン(約46兆円))を抱える不動産開発会社として知られる恒大は、2021年の景気減速に伴う資金難で破綻。それ以来、中国の不動産市場は停滞し、現在も回復の兆しが見えない。
ウェイ氏は「ここ数年で22万元(約440万円)だった車の価格が12万元(約240万円)まで下がった」とし、「10万元以上も価格を下げて品質を保証することは不可能だ」と厳しい見方を示した。
中国の自動車業界が価格競争によるコスト削減圧力に直面する中、品質、収益性、サプライチェーンのすべてが脅かされていると指摘した。
公の場で率直な発言をすることで知られるウェイ氏は、自身への批判に対し「業界が健全に発展できるなら、私が非難されても構わない」と述べた。
彼の衝撃的な発言に加え、BYDの30%を超える値引き情報が重なり、中国の自動車産業に対する業界内外の危機感が高まっている。
BYDは来月末まで、自社の電気自動車とプラグインハイブリッドモデル22種を対象に最大34%の割引キャンペーンを展開すると発表した。
この極端な値引きは、中国の自動車メーカーだけでなく、テスラやフォルクスワーゲンなどの海外ブランドにも影響を及ぼしている。
一部の海外ブランドは、激しい価格競争に耐えきれず、中国国内のシェアを事実上放棄する状況に追い込まれているという。
値引き情報が伝わるや否や、BYDの株価は一時8.3%まで急落。理想汽車、長城汽車、吉利汽車など同業他社の株価も5%以上下落した。
自動車の価格競争が、中国国内の消費低迷と中国経済全体の停滞によってさらに激化していると、ブルームバーグは指摘している。
中国乗用車協会によると、4月時点の自動車在庫は350万台で、2023年12月以来の最高水準を記録した。
在庫の積み上がりと販売実績へのプレッシャーは、市場の歪みをもたらした。
業界の公然の秘密とも言える「走行距離0kmの中古車」の販売慣行が明るみに出て、中国の自動車産業のもう一つの歪んだ実態が浮き彫りになった。
販売実績を上げるために新車を出荷処理した後、実際には走行していない状態で中古車として販売する手法だ。
過去にもこうした便法は存在していたが、最近の中国政府による内需刺激策としての新エネルギー車(電気・水素・ハイブリッドカー)補助金政策と、企業の在庫処理負担が原因で、この現象がさらに深刻化していると見られる。
ウェイ氏はこの問題についても言及し、「中国国内の中古車販売サイトで、このような中古車を扱う業者が3,000から4,000社に上ると推定される」と明かした。
世界市場をリードする中国の電気自動車産業が、中国国内では無理な拡張と歪んだ流通構造の中でいわゆる「不良成長」を遂げていることが明らかになり、あちこちで危機の兆候が現れている。
中国の電気自動車メーカー50社余りのうち、BYD、理想汽車、賽力斯集団(セレス・グループ)を除くすべての企業が赤字を計上していると、香港の日刊紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)が20日に報じた。
SCMPはJPモルガンのレポートを引用し、中国の自動車メーカーの4月の平均割引率は16.8%で、これは昨年の平均(8.3%)の2倍に当たる過去最高を記録したと伝えた。