
インド西部アフマダーバードを出発し、イギリス・ロンドンに向かっていたエア・インディア旅客機が12日(現地時間)、離陸直後に墜落し、200人以上が死亡する惨事が発生した。事故機は近隣の大学と民家に激突し、地上でも多数の死傷者が出ている。今回の事故は、2020年にインド南部コジコード空港で起きたエア・インディア・エクスプレス機墜落以来、インド国内で最悪の航空事故とされる。当時の死者は21人だった。
事故機はボーイング787-8ドリームライナーで、2013年製造、2014年にエア・インディアに引き渡され就航していた。ドリームライナー機種としては初の墜落事例となる。一部の航空専門家は「公開された映像で着陸装置が離陸後も展開されたままなのは異常だ」と指摘し、機体の欠陥の可能性を示唆している。
現地当局によると、事故機はアフマダーバード空港を離陸して1分も経たないうちにメーデー信号を発信し、その後交信が途絶えた。その後、空港近くのBJ医科大学の学生寮に衝突して爆発した。現時点で少なくとも204人の死亡が確認されている。搭乗者に加え、地上にいた学生や住民も多数が死亡または負傷したという。
救助当局は「建物2階で学生たちが昼食していた際に、機体の一部が食堂の天井を直撃し、多数の死者が出た」と明かした。寮にいた学生の母親は「息子が昼食中に悲鳴を上げ、2階の窓から飛び降りたと言っていた」と語り、「怪我はしたが、幸い命に別状はない」と述べた。
事故の生存者ヴィシュワシュクマール・ラメシュさん(40)は現地紙「ヒンドゥスタン・タイムズ」に「離陸後30秒ほどで轟音がし、その直後に飛行機が墜落した」と証言した。彼は座席11Aに座っており、事故直後に病院に搬送され生存が確認された。「意識を取り戻したとき、周りは遺体と破片だらけだった」と語り、「別の座席にいた兄と連絡が取れない」と泣き崩れた。
エア・インディアは搭乗者名簿を公表し、乗客242人のうち217人が成人で、子ども11人、乳児2人が含まれていたと明らかにした。国籍別ではインド人169人、イギリス人53人、ポルトガル人7人、カナダ人1人が搭乗していたことが確認された。
米国家運輸安全委員会(NTSB)は調査団をインドに派遣する方針を示し、ボーイングとエンジン製造元のGEも別途調査チームを編成し事故原因の分析に当たっている。インド当局は遺族にDNAサンプルの提供を求め、身元確認作業を進めている。
モディ首相はX(旧ツイッター)で「信じがたい惨事に言葉を失う」とし、「可能な限りのあらゆる資源を動員して救助と収拾に当たる」と表明した。英政府も被害者支援と事実確認のため、インド当局と協議中だと発表した。
エア・インディアの筆頭株主であるタタ・グループは、犠牲者の遺族に1,000万ルピー(約1,681万円)の補償金を支払い、負傷者の治療費と寮の復旧費用を全額負担すると明らかにした。