
韓国のスマートフォン市場を二分しているGalaxyシリーズとiPhoneは、1日1回の充電がほぼ不可欠である。特に朝早く出勤・登校して夜遅くに帰宅する人々にとって、実質的に毎日の充電は必須となっている。帰宅途中に「バッテリー残量20%」の警告を見る人も少なくない。国外に目を向けても、GalaxyやiPhoneと並び人気を集めているグーグルのPixelシリーズも事情は変わらない。
このように、いわゆるスマートフォン「ビッグ3」とも言えるサムスン・アップル・グーグルが、バッテリー性能の分野では後れを取っているという結果が出た。主要スマートフォンを対象にしたバッテリーテストでは、上位をすべて中国製スマートフォンが独占する形となった。
バッテリー性能、Galaxy S25 Ultraは23位・iPhone 16 Pro Maxは14位…中国製スマホがトップ10を席巻
IT専門メディア「PhoneArena」は19日、2025年モデルの主要フラッグシップスマートフォンを対象にしたバッテリー持続時間のベンチマーク結果を公開した。テスト結果によると、サムスン電子の「Galaxy S25 Ultra」は5,000mAhのバッテリーを搭載しながらもバッテリー持続時間は8時間で23位にとどまった。アップルの「iPhone 16 Pro Max」は4,685mAhと容量は小さいものの、8時間30分で14位とやや健闘した。
一方、グーグルの「Pixel 9 Pro XL」は最も大きい5,060mAhのバッテリーを積んでいたが、7時間18分で51位と、3社の中で最も短い結果となった。
対照的に、中国メーカーのフラッグシップモデルはバッテリー部門で大きく優位に立った。vivoの「X200 Ultra」は6,000mAhの大容量バッテリーを搭載し、9時間37分で3位にランクイン。市販されているスマートフォンの中では最上級レベルとされる。ZTEの「RedMagic 10S Pro」は7,050mAhで9時間34分(4位)、nubia「Z70 Ultra」は6,150mAhで8時間47分(9位)を記録。Honorの「Magic6 Pro」も5,600mAhのバッテリーで9時間27分(5位)となり、上位を中国勢が占める結果となった。

このように、中国製スマートフォンのバッテリー性能が圧倒的な強さを見せている背景には、新技術の導入がある。中国スマートフォンには、従来のリチウムイオンバッテリーではなく、「シリコン–カーボンバッテリー」という新たな技術が採用されている。この技術は、バッテリーの負極材にシリコンを使用してエネルギー密度を高める方式で、同じ体積でもより多くの容量を確保できるのが特徴だ。現在、この技術は中国メーカーが独占的に使用しており、業界内での競争力を大きく引き上げている。
ベンチマークで上位に入った企業以外にも、OPPO、OnePlus、Xiaomiなどの中国メーカーはすでにこの技術をフラッグシップモデルに採用して量産を開始している。中国国内では、シリコン–カーボン負極材を製造する電池メーカーが10社以上稼働中とされ、中国全体での技術力の底上げが進んでいる。このようなバッテリー技術の発展の背景には、ここ数年で急成長を遂げた中国の電気自動車(EV)市場がある。EV向けに開発された先端バッテリー技術が、スマートフォン分野に応用された形だ。
一方で、サムスン電子やアップルなどのグローバル大手は、現時点でこの技術を自社製スマートフォンに導入していない。導入時期や適用モデルについても明らかになっておらず、次期モデルでも従来のリチウムイオンバッテリーを継続使用する可能性が高いとみられている。
大画面化・AP進化・AI導入で5,000mAhでは不足…バッテリー容量の拡大は不可避に
これまでサムスン電子やアップルは、ソフトウェアの最適化を通じてバッテリーの実使用時間を伸ばしてきた。しかし最近では、「5,000mAh程度のバッテリーでは実用性が落ちる」との指摘が業界内で相次いでいる。スマートフォン性能の向上に伴い、バッテリーの消耗も急増しているためだ。
その大きな要因の一つが、大型・高輝度化したディスプレイだ。最新のフラッグシップモデルでは7インチ近い大画面が主流となり、最大輝度も2,000ニットを超える機種が登場している。これに加え、高リフレッシュレート(高駆動ディスプレイ)を併用すると、バッテリー消費は指数関数的に増加する。
スマートフォンの心臓部であるアプリケーションプロセッサ(AP)の消費電力も、年々増加傾向にある。たとえば、現在の最新サムスン製スマートフォンなどに搭載されているクアルコム製「Snapdragon 8 Gen3 Elite」の熱設計電力(TDP)は8.2Wに達し、初代Snapdragon 8(5.3W)と比べて1.5倍以上の数値となっている。性能向上による演算量の増加が主な原因で、これに伴ってバッテリー消費も顕著に増加している。特に高性能ゲームや処理負荷の高いアプリを使う場面では、バッテリーの減りが一層早くなる。
また、ユーザーインターフェース(UI)の複雑化もバッテリーの持ち時間に影響を与えている。画面遷移時のアニメーションや透過効果、動きのあるグラフィックなどは、スマートフォンのGPU(画像処理装置)に継続的な負荷を与える。ゲームほどではないが、UIは常に動作している常駐機能であるため、累積的な電力消費も無視できない。
さらに近年では、生成AIや音声アシスタント、検索要約など多彩なAI機能がスマートフォンに搭載され、端末内で直接処理する「オンデバイスAI」の採用が進んでいる。これにより、専用ニューラルエンジンや高性能APの搭載が求められている。音声翻訳、テキスト生成、検索結果の要約など、さまざまなAI機能がクラウドサーバーを介さずスマートフォン端末内で処理されるようになったことで、バッテリー消費量がさらに増加している。

結果的に、バッテリー技術が進化しない限り、スマートフォンを一日以上充電なしで使うのはますます難しくなっている。現時点で従来のバッテリーの限界を超えた製品は、シリコン–カーボン電池を搭載した一部の中国製スマートフォンのみであるのが現実だ。
Honorはすでに第4世代のシリコン–カーボン電池技術を採用しており、XiaomiやOnePlusなどもこの分野に参入している。これらの企業は、チップセットやディスプレイ性能がさらに高度化しても、2~3日間充電なしで使えるスマートフォンの実現が現実的だと期待を寄せている。
結局、GalaxyやiPhoneのユーザーにとって選択肢は二つしかない。現行のエコシステム内で進化を「待つ」か、それとも新しいバッテリー技術を体験するためにプラットフォームを変えるかだ。
なお、サムスン電子もエネルギー密度を高めるためにバッテリー内部素材を積層化する「積層型バッテリー技術」や、リチウムイオンに代わる高効率の新素材開発を進めているが、実際に製品へ応用されるまでにはまだ時間がかかる見通しである。