
世界最悪の麻薬組織とされるメキシコの「シナロア・カルテル」が、米国とメキシコ政府の厳しい取り締まりや内部抗争により弱体化し、ライバル組織の「ハリスコ新世代カルテル」と同盟を結んだと、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)が30日(現地時間)に報じた。
Newsisの報道によると、NYTは窮地に追い込まれたシナロア・カルテルの動きにより、ハリスコ新世代カルテルが世界最大の麻薬密売組織に成長する可能性を懸念しているという。
シナロア・カルテルは、南北アメリカ大陸からニュージーランドまで各国の犯罪組織と同盟を結び、世界的な麻薬帝国として君臨し、莫大な利益を上げてきた。特に、米国に致死的なフェンタニルを供給してきたことで悪名が高い。
しかし最近、シナロア・カルテル内の主要な2つの派閥が対立し、暴力事態が発生している。
また、米国の強い圧力を受けるメキシコ政府は、最近シナロア州に数千人の兵力を配置するなど、シナロア・カルテルの取り締まりを強化してきた。
これにより、資金や資源、人員に甚大な被害を受けているシナロア・カルテルの中核派閥が、資金と武器の支援を受ける見返りに、自らが支配していた 地域をハリスコ新世代カルテルに譲渡した。
シナロアとハリスコの両カルテルは、ここ数年メキシコ全土で血みどろの縄張り争いを繰り広げてきた。
米ブルッキングス研究所のバンダ・フェルバード=ブラウン研究員は、「冷戦時代に米国東海岸が米国から独立してソ連と手を組んだようなものだ」と述べ、「世界の犯罪市場に影響を及ぼす可能性がある」と指摘した。
安全保障専門家のエドゥアルド・ゲレーロ氏は、「ハリスコ新世代カルテルが、巨額の資金とフェンタニルに関する専門知識、国際的なネットワークを持つシナロア・カルテルを利用することで、世界の麻薬市場を支配できる可能性がある」と警告した。
シナロア・カルテルでは、ボスのホアキン・グスマン・ロエラの息子たちの支持勢力(通称ロス・チャピトス)と、もう一人の創設者イスマエル・サンバダ・ガルシアの支持勢力との間で激しい抗争が続いていた。
この紛争は、ロス・チャピトスが昨年夏にサンバダを誘拐し、米国に引き渡したことから始まった。
その後の権力闘争により、シナロア州だけで1,300人が死亡し、1,500人以上が行方不明になった。
この中で、資金と人員が不足しているロス・チャピトス支持勢力が、ハリスコ新世代カルテルに自らの支配地域を譲渡した。支配地域の譲渡は麻薬密売ルートの喪失につながるため、これは重大な転換点となる。
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