
地球温暖化によって、猛暑や厳冬、大雪、集中豪雨といった極端な気象現象が頻発している。今後もこの傾向はさらに強まると予測される中、こうした異常気象によるストレスが胎児の脳の発達に悪影響を与えるという衝撃的な分析結果が発表された。
米・ニューヨーク市立大学(CUNY)心理学科、高等科学研究センター、マウントサイナイ・アイカーン医科大学の環境医学・公衆衛生学科、精神医学科の共同研究チームは、極端な気象現象が妊婦および胎児にストレスを与え、その結果として神経発達が阻害され、「基底核」と呼ばれる脳の部位の体積にも影響を与える可能性があると、13日に明らかにした。基底核は運動能力や感情の調節に関わる重要な領域である。この研究結果は、米国の国際学術誌『PLOS ONE』6月12日号に掲載された。
研究チームは、ニューヨークに住む8歳の男女児34人を対象に、脳の基底核の体積をMRI(磁気共鳴画像)で測定した。このうち11人の親は、妊娠中に米国史上最強クラスの熱帯性低気圧「ハリケーン・サンディ」に見舞われた経験がある。サンディは2012年10月にカリブ海から米国東部、ニューヨーク一帯を襲い、豪雨・強風・大雪をもたらした超大型ハリケーンで、多くの気象学者はその激しさが気候変動の影響によるものだと分析している。
調査の結果、サンディの影響を受けなかった23人と比べ、被災経験のある11人は、基底核の一部である「被殻(putamen)」と「淡蒼球(pallidum)」の両側、そして右側の「尾状核(caudate)」の体積が大きいことがわかった。研究チームは、ハリケーンの際に猛暑も発生していた点に注目している。妊娠中に猛暑を経験した親の子どもでは、「側坐核(nucleus accumbens)」の左側体積が小さく、左の淡蒼球体積は逆に大きかったという。たとえ気候変動を直接体験していなくても、母親が強いストレスにさらされることが、胎児の脳の形成や発達に悪影響を与える可能性があると研究チームは説明した。
研究を主導したCUNYの野村洋子教授(認知神経科学)は、「気候変動によって極端な天候や自然災害がさらに頻繁かつ深刻になると予測される中、胎児への影響も無視できない」と警鐘を鳴らした。さらに「今回の研究結果は、気候危機が環境問題にとどまらず、未来の世代に神経学的な危機をもたらす恐れがあることを示す強力な証拠である」と語っている。
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