
中国で、軍の将校を装った女が8年間にわたり交際相手の男性とその家族からおよそ65万元(約1,300万円)をだまし取り、姿を消した事件が波紋を広げている。2人は8年間でわずか4~5回しか会っていないのに、結婚を約束していたという事実に多くが驚いた。
この詐欺事件は、23日の香港紙『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)』により報じられた。被害者のチ氏(30代)は四川省成都市の自動車工場に勤める会社員で、当時、両親から結婚を強く勧められていた。そんな中、2018年末にオンラインのデーティングアプリを通じて、「リ華」と名乗る女性と知り合った。
リ華は、自身を「都江堰市の武装警察に所属する軍の幹部」と名乗り、出会ってほどなく、チ氏とその両親を自身の故郷とする貴州省に招き、親族を紹介することで、事実上の婚約関係を築いた。
しかし、8年間で2人が直接会ったのは、わずか4~5回程度だった。会うのは主に都江堰市での短い昼食のときで、リ華は「部隊に戻らなければならない」と言い残し、毎回足早に立ち去っていた。
2020年には結婚写真まで撮影したが、その後も実際に顔を合わせる機会はほとんどなかった。リ華は「軍の機密」を理由に、2人の写真をSNSに投稿することも控えるよう求めていたという。
リ華はさらに、4LDKのアパートを購入したと主張し、家賃は自身が負担する代わりに、修繕費の支払いをチ氏に求めた。その他にも結婚披露宴の費用、養豚事業への投資、両親の治療費、クレジットカードの返済など、さまざまな名目で金銭を要求し続けた。
農業を営むチ氏の両親は、息子の結婚を信じて、長年かけて蓄えてきた貯金を惜しまず渡し続けた。家族がリ華に送った金額は、8年間で合計65万元にのぼる。
リ華はあらゆる個人情報について「軍の機密」と主張し、明かそうとしなかった。身分証の提示や実家訪問の提案、結婚計画の相談などもすべて「軍の機密だから」として避けていた。チ氏は「個人的なことを聞くたびに“それは機密だから答えられない”とかわされた」と振り返っている。
事態が発覚したのは、チ氏と父親がリ華の所有を名乗るアパートを訪れた際だった。玄関は施錠されており、管理事務所に確認したところ、「リ華」の名義で登録された住人は存在しないことが判明した。
今年1月に警察に通報したことで、翌2月に正式な捜査が開始された。しかし、警察はいまだリ華の行方をつかめておらず、現在はオンライン上で指名手配されている。
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