
韓国で、授業中に自分の指示に従わない生徒に「生意気なXX」と暴言した小学校教員の行為は、情緒的虐待に該当しないとの最高裁判所の判断が下された。
8月10日、最高裁判所第1部(主審 マ・ヨンジュ最高裁判事)は、7月3日に児童福祉法違反(児童虐待)の容疑で起訴された韓国の光州市のある小学校4年生担任教員A被告の事件について、50万ウォン(約5万3,180円)の罰金刑の宣告猶予とした原審を破棄し、事件を光州高裁に差し戻した。
A被告は2022年5月、生徒のB君が授業中に「携帯電話を鞄に入れなさい」という指示に従わなかったため、携帯電話を取り上げた。B君が机を叩いて苛立ちを示すと、他の生徒の前で「こんな生意気なやつは見たことがない」と発言し、服の襟を引っ張った後、頬をつねった。その後、B君を教室の後方で約12分間立たせた。
検察は、この発言と行為が児童福祉法第17条で禁止される情緒的虐待に該当するとして起訴した。1審は暴言部分については虐待に当たるとしながらも、その他は指導目的であったと判断し宣告猶予としたが、2審は双方の控訴をすべて棄却した。
しかし、最高裁の判断はこれと異なった。裁判所はA被告の発言が不適切であり生徒に不快感を与える可能性はあるが、これを精神的暴力や過酷な行為と評価するには至らないと判断した。
裁判所は「A被告の発言のきっかけとなったB君の行為は、教員の権限を侵害する授業妨害行為であり、担任教員は生徒指導に一定の裁量を有し、授業を妨害した生徒に対して指導や訓育などの教育的措置を講じることができる」と述べた。
さらに、「当時のA被告の態度、B君の性格、発言の程度と経緯を考慮すると、B君の人格を直接的に貶める意図があったとは認めがたい」とし、「被告が被害児童に対する指導・訓育などの教育的措置を講じる過程においてこの発言をしたことは不適切だと判断される」と述べた。
また、「自分の感情をコントロールできない被害児童を厳しく指摘して落ち着かせようとする意図であったり、教育現場の実情や困難さから発した独り言や愚痴に近い可能性もある」と付け加えた。
B君は法廷で「少し気分が優れず、悲しく、友達が多い中でそのような発言を聞かされて友達の前で恥をかかされたようで、とても屈辱的だった」と証言した。しかし裁判所はこれについて「A被告の発言がB君の精神的健康や正常な発達を阻害したり、その結果を招く危険に至る程度と断定するのは難しい」と判断した。
最高裁は「原審の判断には、児童福祉法第17条5号が定める『情緒的虐待行為』に関する法理を誤解するなど、判決に影響を及ぼした誤りがある」とした。
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