
フランスのミネラルウォーターブランド「エビアン」が「天然鉱泉水」ではなく「浄水」であることが明らかになった。
最近、エビアンのブランドイメージに亀裂が生じているとの評価が出ている。約1年前、フランスの有力紙『ル・モンド』とラジオ局『フランス・アンフォ』の調査報道により、エビアンが長年にわたり違法な浄水処理を行っていた事実が発覚した。さらに、フランス政府がこの事実を把握していながらも隠蔽していたとの疑惑が浮上し、ブランドのイメージにも大きな打撃を与えた。
ル・モンドは昨年1月「エビアンなどのミネラルウォーター業者が『湧水』や『天然ミネラル』と表示しながら、違法な浄水技術を使用していた」と報じた。特に、エビアンについては、少なくとも製品の3分の1が関与していたと指摘し、エビアン側もこの事実を認めたと伝えられている。
フランス政府は2021年からこのような事態を把握していたが、水面下で規制を緩和していたことが判明した。
フランスでは、浄水処理を施した飲料水は「飲用可能な浄水」と表記するように規定が定められている。「湧水」や「天然ミネラルウォーター」「天然鉱泉水」といった表示は禁じられており、こうした天然水は保全された地下資源から採取され、消毒も禁止されているという。
一方、いわゆる「一般的な飲料水」については、塩素処理や濾過など一定の浄水工程が許可されており、価格も安価で消費者からの信頼度は相対的に低い。エビアンは実際にはこれらと同様に、微生物や微小粒子状物質を取り除くため、紫外線(UV)消毒や活性炭フィルターを密かに使用していたことが明らかになり、批判の声が高まっているのだ。
今年5月に公表されたフランス上院の報告書によれば、農業省や財務省傘下の不正競争・詐欺防止総局(DGCCRF)はすでに2021年9月の時点で、ミネラルウォーター製造業者による違法な浄水処理の実態を把握していたという。それにもかかわらず、政府は企業の要請を受け入れ、この事実を公表せず、供給網への影響を考慮して規制緩和を模索していたことが明らかになった。
さらに、ネスレを含む企業が200万ユーロ(約3億4,500万円)の罰金を支払うことで、違法行為を隠蔽しようとしていた事実も判明した。
この調査の責任者であるアレクサンドル・ウイジエ上院議員は、今回の問題を「説明不能で、到底容認も理解もできない企業と政府の癒着問題だ」と断じた。また、市民団体も「政府は国民の健康や信頼より企業の利益を優先した」と批判していると伝えられた。
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