12歳の少女たちに避妊具を強制挿入、イヌイット族の人口を抑制する政策
公式報告書に410件の強制避妊記録、デンマーク首相が謝罪

デンマーク政府が数十年にわたり数千人規模のグリーンランドの女性や少女に対し、強制的に子宮内避妊具(IUD)を挿入していた事実が、公式報告書によって明らかになった。
植民地であったグリーンランドの人口を抑制することを目的とした政府主導の施策の一環だったとされる。
米紙ワシントン・ポストとニューヨーク・タイムズによると、この報告書はグリーンランド大学と南デンマーク大学の国立公衆衛生研究所の研究者、歴史学者らによるチームがまとめたもので、9日(現地時間)に発表されたという。全347ページに及ぶ報告書には、1960年代以降の個人の証言、医療記録、歴史資料をもとに計410件の強制避妊の事例が記録されている。避妊具の挿入やホルモン注射に伴う合併症は349件に上った。
デンマークの医師らは、わずか12歳の少女に対しても同意や事前説明なしにIUDを挿入し、一部の女性には排卵を永久に停止させる注射を施した。報告書によれば、被害者のうち143人がすでにデンマーク政府に対し損害賠償を求める訴訟を起こしているという。

デンマークは約300年前にグリーンランドを植民地化し、現在も海外領土として支配している。1960年代から数十年にわたり、政府の政策として医師らがグリーンランドの女性のほぼ半数にあたる数千人に同意なしでIUDを装着していたとされる。
多くの被害者は避妊に同意しておらず、避妊について説明を受けたこともなかった。12歳の少女に検診の過程でIUDが装着され、激しい出血や感染、強い痛みで寝込んだり、学校に通えなくなった例も報告されている。なかには、医師に除去を拒否され、慢性的な痛みや孤立感に苦しみ、自らIUDを除去したと証言する人もいた。
一方、長期作用型ホルモン避妊薬「デポ・プロベラ」を接種された女性もおり、中には月経が永久に止まり妊娠が不可能になったケースもあった。IUDの副作用により子宮摘出を余儀なくされた事例も指摘されている。
被害の多くは1960~70年代に発生したが、1990年代初頭にグリーンランドが医療システムをデンマークから引き継いだ後も同様の慣行が続いたとされる。この事件はIUDの形状から「スパイラル事件」と呼ばれ、グリーンランドの人々が植民地の民として扱われた屈辱の歴史と位置づけられている。

先月末、報告書の発表に先立ち、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相は謝罪声明を発表していた。グリーンランドのアンナ・ワンゲンハイム保健相は「報告書は、多くの女性が長年沈黙の中で背負ってきた経験を明らかにした。デンマーク政府は具体的な行動で責任を取るべきだ」と述べている。
また、ドナルド・トランプ米大統領が就任直後に「グリーンランドを買収したい」と繰り返し発言したこともあり、今回の真相解明がデンマーク政府の補償問題にどう影響するか注目されている。IUDが挿入されていたことに気付かず、15歳でIUDを除去したという元教師のウラット・バッハさんはデンマークのテレビ局に対し、「この報告書は私たちが経験した苦痛を認めたもので、もう誰も逃げられない」と語った。
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