火星の内部は、教科書に描かれるような均質な構造ではなく、惑星形成初期に巨大な小惑星などとの衝突により生じた数キロメートル規模の地殻とマントルの破片が混在している状態であることが、最新の研究で明らかになった。

イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)のコンスタンティノス・カララームブス博士率いる国際研究チームは、29日付の科学誌サイエンス(Science)で、火星着陸探査機インサイト(InSight)が観測した8回の火星地震を分析し、この結論に達したと発表した。
研究チームは、「地震波から明らかになった火星内部構造が、表面上では長期間静止しているように見えるこの惑星の地下に隠されたものを垣間見る貴重な機会を提供する」と述べた。この発見が、金星や水星など他の岩石惑星の数十億年にわたりどのように進化してきたかについての理解にも影響を与える可能性があると指摘した。
一般に、火星のような岩石惑星の内部は、地殻とマントルと核が層をなす地球のようにおおむね均質な物質が整然とした層を形成していると想像されがちだ。しかし、火星の地震計測が可能になったことで、実際にははるかに不整然な構造であることが明らかになっている。
研究チームは、2018年11月~2022年12月に火星地質探査任務を遂行したNASAの火星着陸探査機インサイトが火星表面に設置した地震計で観測した8回の地震データを用いて、火星内部の構造を分析した。
分析対象となった8回の地震には、地表に150メートル規模の衝突クレーターを形成した2回の地震や、地殻よりもマントルで発生したと推定される地震などが含まれていた。

研究チームは、地震波の伝播特性などのデータ分析から、高周波P波(圧縮波)がマントルのより深い部分を通過する際に一貫して遅れて到達する現象を発見した。
P波の遅延現象は、通常、火星マントルの構成物質が均質な場合には現れないはずの現象である。
研究チームは、P波の遅延現象が火星マントル内部にキロメートル規模の微妙な組成の違いが存在することを示していると述べた。
さらに、火星には地球のようなプレートテクトニクスや大規模な物質循環過程が存在しないため、マントル内の小さな不規則性は極初期の歴史に残された痕跡にほかならず、火星形成初期に起こった巨大衝突のような事象に由来するものと説明した。
小惑星などとの衝突により、火星内部が粉砕され溶融し、巨大なマグマの海が形成された。地殻とマントルの破片、また外部から飛来した物質などがマグマの海に混ざり合って固まった。そして、内部の地質活動がほぼないため、これらの痕跡が地質学的な化石として現在まで残っているという。
研究チームは、火星が形成されて間もない約45億年前に、他の惑星規模の天体と衝突したと推定している。その規模は、月を誕生させた地球と未知の天体との衝突に匹敵するほど大きかったと推測する。
カララームブス博士は、「このプロセスの大部分は火星形成後の最初の1億年間に展開されたと思われるが、火星は外部の地殻が早期に固まり、その内部を地質学的なタイムカプセルのように保存している」と述べ、「45億年経った今でもその痕跡が検出できるということは、火星内部がいかに緩やかに混合されてきたかを示している」と語った。
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