
米国で不法滞在していたアフリカ出身者らが、全身拘束具に縛られたままガーナへ強制送還され、物議を醸している。
「AP通信」によると、14日、ナイジェリア出身の男性A氏は、移民関税執行局(ICE)によるガーナへの強制送還について、「誘拐」のようだったと語った。
連邦訴訟に関与している男性A氏は、先月、自国ではなくガーナに送還された。彼はAP通信に対し、「ICE職員が深夜に収容者を起こし、手足に拘束具を装着してガーナへ送ると言った。しかし、我々の中にガーナ出身者はいなかった」と証言した。
A氏は弁護士との通話を求めたが拒否された。その後、拘束された男性らには全身拘束具ラップ(WRAP)を装着させられ、16時間かけて西アフリカ行きの航空機に乗せられたと主張している。収容者たちは、この拘束具を「ブリトー」や「あのかばん」と呼んでいたという。
A氏は、ガーナの収容所への移送を「誘拐されたようだ」と表現し、報復を恐れて匿名でAP通信の取材に応じたと付け加えた。
ラップは、アメリカメーカーのセーフ・リストレインツ社製の拘束システムで、唾吐き防止マスク、上半身拘束用ハーネス、3段バックル付き下半身拘束具、足枷などで構成される。
米国政府は、2015年末のオバマ政権時代からラップの購入を開始した。特にトランプ政権下で購入が急増し、両政権合わせて全購入量の91%を占めたという。ただし、ICEは使用記録を公開しておらず、詳細な使用頻度は不明だ。
AP通信は、ICEがメーカーの推奨基準以下の状況下でもラップを乱用していると指摘している。メーカー側は、これは警察への攻撃や自傷行為から保護するための装置だと説明している。
A氏の他にも、複数の強制送還された外国人が送還過程でラップを着用させられたと主張している。
先月末にメキシコ国境へ送還されたエルサルバドル出身のフアン・アントニオ・ピネダ氏も、ラップを着用させられた経験があると語った。当時合法的に滞在していたピネダ氏は、滞在期間の1年延長のため妻と面談に訪れた際、ICEに拘束されたという。
ピネダ氏は「ICEが私を拘束し、メキシコに送還すると通告した。しかし、彼らが提示した書類には私の名前ではなく、他人の名前が記載されていた」と述べた。
その後、アリゾナ州の拘束施設に移送されたピネダ氏は、9月24日の早朝、警察官らによって自分の手足を縛られ「カバン」に入れられ、国境まで約4時間車で移動させられたと回想した。送還書類への署名を強要され、拒否すると右腕を折られ、目にあざを作られた後、再び「カバン」に入れられて4時間移動させられたと主張している。
ピネダ氏がICE職員や警察官から実際に暴行を受けたかどうかは確認されていないが、ピネダ氏は腕にギプスをし、顔にあざができた状態の写真をAP通信に提示したという。
ICEのラップ使用に関して訴訟を起こしたテキサスA&M大学のファトマ・マルーフ法学教授は、「ラップは他の方法を試みた後の最終手段であるべきだ。この装置に縛られるだけでも相当な心理的被害を引き起こす」と指摘している。
ラップ製造元のセーフ・リストレインツ社のチャールズ・ハモンドCEOは、「ICE向けに改良版を開発し、航空機や長距離バスでの移動中も使用可能」と釈明したが、一部が主張するように、口頭での抗議のみでラップを使用したのであれば問題になり得ると述べた。
また、ICE職員が適切な拘束具使用訓練を受けていないとの懸念の声も上がっている。
過去には、警察官や刑務官がラップを着用させた被拘束者に暴行を加えたり、催涙ガスを浴びた容疑者にマスクを装着させた結果死亡させた事例があり、いずれも不適切な拘束具の使用による死亡事件と結論付けられている。
一方、米国のネットユーザーの間では、ICEのラップ使用に問題はないとの意見が多数を占める。「不法行為をしたから拘束具を着けられた」「警察官に危害を加えさせてはならない」「不法入国しなければ解決する問題だ」「被害者ぶるな」といった反応が目立っている。
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