
ロンドンが携帯電話窃盗の「聖地」と化している。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は2025年10月17日付の記事で、2024年にロンドンで盗難届が出された携帯電話がおよそ8万台に達し、前年(6万4000台)から大幅に増加したと報じた。
近年、ロンドン全体の犯罪件数は減少傾向にあるものの、携帯電話の窃盗だけは例外的に多発している。2024年時点で、ロンドンの窃盗事件の約7割が携帯電話関連の犯罪であり、全体の中でも際立っている。
専門家は、警察予算削減による人員不足や軽犯罪捜査の縮小、そして2018年以降に急増した電動自転車が犯行後の逃走手段として利用されている点を主な要因として挙げている。
ロンドンの路上では、覆面と帽子を身に着けた窃盗犯が通行人から携帯電話を奪い、電動自転車で瞬時に逃走する手口が横行している。こうした犯行が増加するなか、ロンドンは「欧州の犯罪中心地」と揶揄される事態となっている。
携帯電話の窃盗は、もはや単なる街頭犯罪ではなく、組織的な犯罪形態に近い実態を示している。2024年12月、携帯電話を盗まれた女性が「iPhoneを探す」機能を使って端末を追跡したところ、ロンドン・ヒースロー空港近くの倉庫に1000台を超えるiPhoneが密輸されていた事実が判明。これを機に大規模な捜査が始まった。
その後、ロンドン警視庁は麻薬・銃器対策専門チームを投入し、捜査を強化。最終的に、盗難携帯約4万台を中国へ密輸した疑いで30代の男2人を逮捕した。
調査の結果、盗難された携帯電話は主に中国とアルジェリアに流通しており、特に中国では最新のiPhoneが1台あたり5000ドル(約76万8,500円)という高値で取引されていることが分かった。
専門家によると、中国の主要通信会社が国際ブラックリストシステムに加盟していないため、盗難携帯の流通を防ぎにくくしているという。
オックスフォード大学のジョス・ライト教授は「英国で使用をブロックされた盗難携帯が、中国では問題なく使える状況にある」と指摘した。
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