特定の領域主導ではなく、全体的な協力の産物

朝に水かコーヒーを選ぶとき、脳内で何が起きているのか。脳がどのように意思決定を行うかは、科学者たちがまだ完全には解明できていない分野のひとつである。
科学者たちはマウス実験を通じて、意思決定時に脳の特定領域ではなく全体が活性化することを発見し、国際学術誌『ネイチャー』に2本の論文として発表した。
この発見は、意思決定が脳全体に分散した複数の領域が複雑に絡み合い、高度に協力するネットワーク方式で行われることを示している。これは、脳の情報処理がピラミッドのように特定領域から始まり、順次上位領域へと伝達されるという従来の階層的観点に異を唱える研究である。

クリスマスツリーの点灯のように一斉に光る
国際脳科学機構(IBL)に参加する欧米12研究所の科学者たちは、139匹のマウスの脳に電極を挿入し、マウスが行動を決定する際の62万以上の個別ニューロンの信号を記録した。研究チームを率いたジュネーヴ大学のアレクサンドル・プジェ教授は、意思決定活動がクリスマスツリーの点灯のように脳を明るく照らすと語った。
研究チームは、最先端電極であるニューロピクセルによって、マウスの脳全体の95%に相当する279領域をモニタリングすることに成功した。今回が、意思決定過程における脳全体の個別ニューロン活動の記録として初めての試みである。
実験では、マウスを画面の前に配置し、左右に現れる黒い縞模様の円をハンドルを回して中央に移動させると砂糖水を報酬として与えた。失敗した場合は、短い休憩とともにポンッという音が鳴った。研究チームは、実験が進むにつれて画面の光を徐々に弱め、円が見えなくなった状況下で、過去の経験に基づきマウス自身が方向を決定するよう誘導した。

統合失調症・自閉症の原因解明に期待
実験結果、マウスが決定を下す瞬間に脳全体でニューロン活動の信号が現れた。報酬への反応は、視覚処理領域から運動制御中枢に至るまで、多様な領域を活性化させた。基本的な感覚領域においても反応が見られた。過去の経験に基づく行動においては、高次思考領域だけでなく、感覚処理や行動制御を含む脳全体が活性化した。これは、脳が予測機械として機能する際に、感覚や行動に関するあらゆる経験を活用していることを意味する。
研究チームは、この発見が統合失調症や自閉症などの精神疾患の原因解明に寄与することを期待している。脳には、期待と結果が異なる場合にその期待を修正するプロセスが存在するが、これらの疾患ではそのプロセスが通常とは異なると推測されている。
今回の研究はマウスを対象としたものであるが、げっ歯類は人間と脳の構造や機能に多くの共通点を持つことから、人間の複雑な認知機能の理解を「全体論」の視点で拡張する重要な第一歩といえる。
ロサンゼルスのカリフォルニア大学に所属するケネス・ハリス教授は「この研究は、一つの研究室で扱うにはあまりにも大規模なプロジェクトだ」と述べ、「従来の神経科学は脳領域を個別に研究してきたが、今や脳全体を記録することで、すべての部分がどのように組み合わさるかを理解できるようになった」と語った。
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのトム・ミセス=フロゲル教授は「脳は宇宙で最も複雑な構造であり、脳がどのように行動を引き起こすかを理解するためには、その複雑さに見合った規模の国際協力が必要だ」と付け加えた。
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