「引退後は温泉で働いていたのに…」日本プロレス界の伝説、野生グマの襲撃で死亡

日本プロレス界の伝説的レフェリー、笹崎勝巳氏(60)が勤務中に野生のクマに襲われ、死亡した。
朝日新聞やバトル・ニュースなどによると、笹崎氏は16日午前10時ごろ、岩手県北上市の瀬美温泉で露天風呂を清掃中に行方が分からなくなった。旅館の代表が午前11時15分に警察へ通報し、現場には清掃用具や眼鏡、スリッパが散乱していたという。柵の内外には血痕とクマの毛も見つかった。
露天風呂は夏油川の崖上にあり、高さ約1メートルの柵で囲われていた。警察は市職員や地元の猟友会など約30人を動員して捜索を開始したが、悪天候のため30分で中断した。翌17日午前9時に捜索を再開し、温泉の北西約50メートルの山林で笹崎氏の遺体を発見した。遺体の損傷状況から、警察はクマによる襲撃が死因とみている。現場付近では体長約1.5メートルの成獣のツキノワグマが射殺された。
この地域では今月8日にも男性がクマに襲われ死亡しており、警察は同一個体による可能性を調べている。専門家は「短期間に同じ地域で人身被害が続くのは異例。クマが人間を餌と認識していた可能性も否定できない」と指摘した。
笹崎氏は1989年、女子プロレスのレフェリーとしてデビュー。全日本女子プロレス、ZERO1、栃木プロレス、マリーゴールドなど数多くの団体で活躍したベテランで、「カツミ・タイガー」の愛称でも親しまれた。選手団のバス運転手を務めた経験もある。
2015年にはZERO1の運営会社・ファーストオンステージの副社長に就任し、2018年にはドリームオンステージの社長に就いた。今年2月から家族とともに北上市へ移住し、温泉旅館で勤務していた矢先の悲劇だった。
プロレス制作代表の新井英夫氏は現地メディアの取材に「温厚で誠実な人物だった。引退後、温泉で働いているとは聞いていたが、こんな形で亡くなるとは思わなかった」と語った。
女子プロレス団体マリーゴールドのロッシー小川代表も「彼の最後のレフェリングはマリーゴールドのリングだった。寡黙だが責任感の強い人で、幼い二人の娘を残して逝ってしまったことを思うと胸が痛む。日本のプロレス界を支えてきた笹崎氏のご冥福をお祈りしたい」と追悼した。
日本では今年、クマによる死亡者が7人に達し、2006年の統計開始以来最多を記録。「クマとの戦い」という言葉さえ飛び交う中、政府は自治体の判断で即時射殺を可能とする法改正を行った。
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