
職場で行為中に死亡した男性に対し、中国の裁判所が「労働災害」と認定した事例が波紋を広げている。
13日付の香港紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)」によると、60代の男性チャン氏は、北京市内の小規模な工場で警備員として働いていたという。警備員は彼一人だけで、昼夜を問わず勤務にあたっており、休暇もほとんど取れない状態だったと伝えられている。
チャン氏は2014年10月6日、工場の警備室で交際相手の女性と会い、行為に及んだ。その最中、突然倒れて死亡し、警察の調査の結果、死因は腹上死であることが判明した。
チャン氏の息子は、労働災害として認定すべきだとして当局に訴訟を起こした。父親は休暇も取れず、交際相手と会う時間すらなかったため、やむを得ず職場で会い、行為に及んで亡くなったというのが理由である。
しかし、工場側と行政当局は「職務遂行中の死亡ではない」として、労災認定を拒否した。
それに対し、チャン氏の息子は「休みも取れないほど追い詰められていたからこそ、警備室で彼女と会わざるを得なかった」と主張したという。「父は勤務エリアから出ておらず、突然の死は労働災害として認められるべきだ」と訴えたのだ。
裁判所はこの主張を認め、チャン氏の息子の訴えを支持する判決を下した。
これに対し、チャン氏の勤務先と行政当局は控訴したが、上級審でも原判決が維持されたという。
重慶のある弁護士は、この判決について「チャン氏は1年中休みなく、24時間勤務を強いられていた」とした上で「交際相手とのデートも、水を飲んだりトイレに行ったりするのと同様に、生理的欲求の一部とみなされた」と解説したとされている。