
かつて「自転車王国」と呼ばれた中国が、いまや世界をリードする「EV(電気自動車)大国」へと変貌した。22日(現地時間)、英『BBC』はEVとバッテリー技術、充電インフラすべてにおいて中国が他国より10年先行していると報じた。
自動車アナリストのマイケル・ダン氏は「中国はあらゆるEV関連要素で、競合国より最低でも10年は先を行っている」と明言。特に注目されるのが、今年初めに米テスラを抜き去ったBYDの存在だ。人口14億人を抱える巨大な国内市場で力を蓄えた同社は、すでに海外展開を加速させており、英国での販売は前年比600%超の急増を記録した。
中国のEV革命の起点となったのは、2007年に当時の中国商務部長だったワン・ガン氏の決断だ。彼は「化石燃料車で先進国に追いつくのは難しい」と見切りをつけ、いきなりEV路線に舵を切った。政府は補助金と税制優遇で企業と消費者の背中を押し、ガソリン車からの乗り換えを猛スピードで進めた。
その結果、昨年中国で販売された新車の半数以上がEVに。中国の消費者たちは「貧しいからEVに乗る」と口をそろえる。事実、EVの維持費はガソリン車の4分の1で済み、日常的な移動手段として「庶民の足」となっている。
インフラ整備でも中国は抜きん出ている。全国に張り巡らされた充電ステーションの数は他国を圧倒し、多くの国でまだ「贅沢品」扱いされているEVが、中国ではすでに「当たり前」になっている。
将来性も明るい。英国など一部の西側諸国が2030年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針を示しており、中国のEVメーカーが世界市場を席巻する日は目前に迫っている。
だが、一つだけ超えなければならない大きな壁がある。中国技術への根深い不信感だ。英国秘密情報部MI6の元長官リチャード・ディアラヴ氏は「中国製EVは北京に操作されうる『車輪付きコンピューター』だ」と警告。搭載されたカメラやセンサーを通じて、国家がデータを掌握できる可能性に言及した。
これに対し、BYDのステラ・リー副社長は「負けた者はいくらでも言い訳を並べるが、それは所詮敗者の理屈」と一蹴。データセキュリティには万全を期し、現地通信インフラを活用して懸念を払拭していると説明した。
しかし、西側社会における「権威主義国家=中国」への警戒感は根強く、BBCも「それこそが中国EV産業が乗り越えるべき最大のハードルだ」と指摘している。
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