
アップルに対する市場の視線が厳しさを増している。AI(人工知能)技術競争で後れを取り、MR(複合現実)ヘッドセット「Vision Pro」などの新製品が振るわず、主力のiPhoneも米トランプ政権の関税戦争でサプライチェーンに打撃を受けた。最近では競合他社に核心的人材まで奪われ、ティム・クックCEO体制移行後14年で最大の危機に直面しているとの評価が出ている。
10日(現地時間)、ブルームバーグの報道によると、米国の調査会社「ライトシェッド・パートナーズ」は最近、顧客向けメモで2011年から長年アップルを率いてきたクックCEOの交代を検討すべきだと主張したという。
ライトシェッドのアナリスト、ウォルター・ピーシック氏(Walter Piecyk)とジョー・ガローン氏(Joe Galone)はメモで「アップルは今や物流中心ではなく、製品中心のCEOが必要だ」と指摘した。これは、世界を驚かせる新製品を次々と発表したアップルのの共同創業者の一人、スティーブ・ジョブズ氏とは異なり、サプライチェーン管理とグローバル経営戦略の専門家であったクックCEOのリーダーシップが現在では有効でないという診断だ。
彼らはクックCEOが「AIを軽視している」とし、「AIは世界経済全体の産業を再編し、アップルはその犠牲者の一つになる危険がある」と述べた。また、「クックCEOは就任当初は適任のCEOで素晴らしい成果を上げたが、より大きな変革が必要な時期が来ている」と強調した。
ゴールドマン・サックス出身で米CNBCの看板キャスター、ジム・クレイマー氏もアップルを公然と批判した。彼はこの日の放送で「アップルは残念ながら困難に直面している」と述べ、「アップルを支持していた人々も今や懸念を抱いている」と語った。クレイマー氏は、エピックゲームズ(Epic Games)との訴訟で明らかになったApp Storeの独占問題、iPhoneの米国内生産を求めるドナルド・トランプ米大統領の圧力と関税政策、AI技術の遅れなどを指摘し、アップルの危機を継続的に取り上げてきた。
アップルへの不安な見方は株価にも表れている。この日のアップルの終値は211.14ドル(約3万1,058円)で、年初来15.7%下落した。同期間にマイクロソフト(MS)とメタ・プラットフォームズが20%以上、NVIDIA(エヌビディア)が約17%上昇したことを考えると、アップルの株価パフォーマンスは一層見劣りする。特にAIブームの先頭を走るNVIDIAは、この日に時価総額4兆ドル(約588兆3,825億円)に初めて到達した。
特に最近、アップルの幹部が相次いで退社する中、クックCEO体制の危機が表面化しているという見方が出ている。7日には、アップルの独自LLM(大規模言語モデル)開発を統括していた主席エンジニア、ルーミン・パン氏がメタ・プラットフォームズに転職したと報じられた。パン氏は2021年にグーグルからアップルに移り、約100人規模のファウンデーションモデルチームを率いてきた。ブルームバーグは「パン氏を皮切りにアップルのAI人材が続々と流出する可能性がある」と予測した。
8日には、アップルのナンバー2であるジェフ・ウィリアムスCOO(最高執行責任者)が年末での退職計画を発表した。ウィリアムス氏は1998年にアップルに入社し、iPodとiPhoneの初期開発および生産体制を構築した。ジョブズ氏の死去後はApple Watchプロジェクトを立ち上げ、アップルのヘルスケア戦略を策定した人物だ。
事実上、最盛期を支えた中心人物の退場により、市場はアップルの世代交代が近いとのシグナルと受け止めている。ウィリアムス氏の後任には、オペレーション担当上級副社長のサビ・カーン氏が指名された。
業界では、今年65歳のクックCEOの後継者となる新しいアップルCEO候補について様々な憶測が飛び交っている。ハードウェエンジニアリング担当上級副社長を務めるジョン・ターナス氏が最有力視されているという分析がある。1975年生まれの比較的「若手」で、クックCEOが非公式の場で何度も高く評価しているとされる。ただしブルームバーグは「ターナス氏は社内での評判は高いが、政治的な人物という見方もある」と指摘した。他にも1969年生まれのソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長のクレイグ・フェデリギ氏も候補として挙げられている。
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