
実験室で培養されたチーズが近い将来、食卓に並ぶことが期待されている。本物のチーズに近い味わいで、栄養面においても利点があるという。
英BBCの13日の報道によると、英国のスタートアップ企業「ベター・デイリー(Better Dairy)」が、3〜4年以内に欧州での発売を目指してビーガン(完全菜食主義者)向けチーズを開発中だという。
実験室で作られたチーズは「新規食品」に分類されるため、欧州での販売には欧州連合(EU)の厳格な承認手続きが必要となる。人工培養食品であるため、生産過程で食品の構造や性質に変化がないか、遺伝的特性が人体に有害な方向に変化していないか、有害な成分や添加物が含まれていないかなどの審査が行われたのちに、承認が下りる。
価格は市場参入の障壁となる可能性がある。ベター・デイリー社は、現時点では実験室製チーズが市販のチーズと価格面で競争力を持たないことを認めている。しかし、今後数年以内に市場価格に近づくと予想している。既存のチーズメーカーとのパートナーシップを通じて、生産コストの削減を模索中だ。
ベター・デイリー社は味の面では競争力があると自信を示している。現在はチェダーチーズの製品化を計画しているが、ブルーチーズやモッツァレラチーズを試作した際も、市販のチーズとの味の差は僅かだったという。
チーズは牛乳から作られる乳製品だ。牛乳からタンパク質である「カゼイン」を抽出し、発酵させて製造する。ベター・デイリー社は酵母の遺伝子を改変し、アルコールの代わりにカゼインを生成するようにして、牛乳を使わずにカゼインを生産している。カゼインを発酵させた後、チーズの風味や食感を再現するために植物性脂肪やミネラルなどを配合している。
ベター・デイリー社は開発したチェダーチーズを3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月熟成させた後、味覚テストを実施し、本物のチーズに近い味わいを実現できたと説明している。味や食感が完全に同じでなくても、ビーガンにとっては動物性チーズの代替品となり得ると考えている。
また、健康面でも利点があると主張した。実験室製のビーガンチーズは乳糖を含まないため、乳糖不耐症の人々も食べられる。また、コレステロールや飽和脂肪の含有量も動物性チーズより低いという。
実験室で人工的に生産された食品は超加工食品とみなされ、消費者の懸念を招く可能性がある。これについてベター・デイリー社は、人々が酪農業を緑豊かな牧場で牛の乳を搾るロマンチックな光景としてのみ認識していると指摘する。
ベター・デイリー社は「酪農業は産業化されており、チーズは本来、天然食品ではないにもかかわらず、人々はまだロマンチックな見方をしている」とし、「消費者はチーズがどのように加工されているのかを理解する必要がある」と述べた。
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