
スペイン北部・アストゥリアス地方の伝統チーズ「カブラレス(Cabrales)」の1個が、オークションで4万2,232ドル(約628万4,000円)で落札され、「世界で最も高価なチーズ」としてギネス世界記録に認定された。
13日(現地時間)、米ニューヨーク・ポストなどによると、今回落札されたチーズは、アストゥリアス地方で毎年8月最終日曜日に開催される「カブラレス・チーズ大会」で今年の1位に輝いた作品だという。
この大会は1968年に始まり、現在では地域を代表する恒例イベントとなっており、15か所前後のチーズ工房が参加して、味、熟成度、質感などを競い合う。優勝チーズは慣例としてオークションに出品される。
今回のチーズは重さ約2.3キログラムで、アストゥリアスのアンヘル・ディアス・エレーロチーズ工房で製造された。その後、ピコス・デ・エウロパ山脈近くの石灰岩の洞窟で約10か月間熟成され、特有の青カビ模様と強い香り、塩味とスパイシーさを併せ持つ風味が特徴だ。
カブラレス・チーズは、スペイン国内で原産地呼称に指定されている伝統食品で、アストゥリアス地方の一部指定地域でのみ生産が許されている。通常は加熱殺菌していない牛乳、山羊乳、羊乳を混ぜるか、単独で使用する。
チーズは自然の洞窟内、湿度約90%、温度8〜12度という高温多湿な環境で25日以上熟成される。この過程で自然にカビが繁殖し、独特の外観と力強い風味が生まれる。

このチーズを落札したのは、アストゥリアスの州都オビエドでレストランを経営するイバン・スアレス氏だ。地元メディアは「新車のミニ・クーパーよりも高価なチーズ」と驚きをもって報じ、「地域職人の技と伝統製法に対する世界的な注目が反映された結果だ」と伝えている。
今年の落札価格は、昨年記録された3万6,000ユーロ(約 621万円)を大きく上回る金額となった。昨年も同じスアレス氏が、同工房のチーズを落札している。過去の落札価格は、2018年が1万4,300ユーロ(約 247万2,442 円)、2019年が2万500ユーロ(約 354万6,770 円)、2023年が3万ユーロ(約 518万8,200 円)と、年々上昇傾向にある。
スアレス氏は「このチーズは単なる食べ物ではなく、一つの芸術だ」と語り、「お客様に本物の職人の味を届けたい」と意気込みを見せた。なお、落札金の一部は、カブラレス・チーズ保護協会や小児がん患者支援団体などに寄付される予定だ。
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