胃がんは種類ごとに発生原因、病状などが異なる。
胃がんは大きく腸型胃がんと浸潤型胃がんに分類される。
腸型胃がんは胃粘膜の腺細胞から発生する胃がんで、比較的典型的なタイプに属する。浸潤型胃がんは粘膜下層の組織に沿ってがん細胞が広く拡散するタイプのがんである。
◆ 腸型胃がん、環境要因の影響を強く受ける、典型的な胃がん
腸型胃がんは主に50代以降の中高年層に多く発生し、男性により多い。塩分の多い食事、喫煙、ヘリコバクター・ピロリ菌感染など環境要因が主な原因とされる。特に長期間、慢性萎縮性胃炎や腸上皮化生といった前がん病変を経て、がんに進行するケースが多い。
このタイプは組織が臓器内部の空間に沿って成長する「壊死型」に近いため、内視鏡検査で早期発見の可能性が高い。がんが比較的局所に留まり腫瘤を形成するため、手術で完全切除が可能なケースも多い。治療反応も良好で、早期発見すれば生存率が高い傾向にある。

◆ 浸潤型胃がん、迅速かつ静かに広がる浸潤性のがん
塊を形成するよりも拡散して成長するため、内視鏡検査で発見しにくく、胃壁全体が肥厚したり硬化したりする形で進行する。比較的若年層、特に女性でも発生率が高く、遺伝的要因が強く関与するとされる。
浸潤型胃がんは進行が速く、リンパ節や腹膜への転移傾向が強い。胃壁全体に広がるか、または周囲の臓器に浸潤するため、手術が困難で予後不良の場合もある。初期症状がほとんどないか、胸やけや消化不良など一般的な胃腸症状と類似しているため、早期診断が難しいという課題がある。

◆ 胃がんのタイプを理解することで精密な治療が可能に
腸型胃がんと浸潤型胃がんは単なる形状の違いではなく、治療戦略そのものが大きく異なる重要な基準となる。例えば、腸型胃がんは比較的予測可能な進行パターンを示すため、手術範囲や化学療法に対する標準的な戦略が確立されている。一方、浸潤型胃がんは進行が早く、治療抵抗性が高いケースが多いため、より精密なアプローチと積極的な経過観察が必要となる。
また、浸潤型胃がんは CDH1遺伝子変異 と関連しており、家族歴がある場合は遺伝子検査が推奨されることもある。若年で胃がんと診断された場合や、家族に同様の病歴がある場合は、遺伝性胃がんの可能性も考慮すべきだ。
◆ 定期検診が最も確実な予防策
両タイプの胃がんとも早期発見が予後を左右する最も重要な要素だ。特に腸型胃がんは内視鏡検査で比較的容易に発見できるため、40歳以上の成人は2年に1度、国のがん検診を継続して受けることが望ましい。浸潤型胃がんは症状が現れるのが遅いため、リスク群(家族歴、ヘリコバクター・ピロリ菌感染、慢性胃炎など)は定期的な検診と専門医の診察が不可欠である。

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