1万光年彼方で伴星を食う白色矮星を発見
国際研究チーム「白色矮星が伴星を急速に吸収…最終的に超新星爆発に至る可能性」
地球から1万光年離れた「矢座V変光星(V Sge)」という連星系で、白色矮星が隣にある伴星を前例のない速さで吸収していることが明らかになった。

フィンランド・トゥルク大学のパシ・ハカラ博士を中心に、英国サウサンプトン大学やスペイン・ラ・ラグーナ大学の研究チームが10日、英国王立天文学会の学術誌(Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)に発表した。観測はチリ・アタカマ砂漠にある欧州南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLTを用いて行われたという。
ハカラ博士は「白色矮星は伴星から流れ込む物質を処理しきれず、周囲に明るく輝く巨大なガスの輪を形成している。極端に不安定な状態にあることは、破局的な終末が近いことを示す兆候だ」と述べている。
矢座V変光星は1902年に初めて確認されて以来、天文学者を悩ませてきた謎多き連星系として知られてきた。質量が太陽の約0.9倍の高密度で高温の白色矮星が、太陽の3.3倍に及ぶ伴星から物質を吸収しており、両星は12.3時間ごとに互いを回りながら距離を縮めている。
白色矮星は伴星から物質を吸収し続けることで年々明るさを増しており、その光度が2倍になるのに要する時間は89年と推定されている。
研究チームは2023年に3か月間にわたり、VLTに搭載された分光器「X-Shooter」で複数回の観測を実施した。X-Shooterは紫外線から可視光、赤外線に至る広範な波長域を高精度で同時観測できる装置である。
分光分析の結果、白色矮星はこれまでにない速さで伴星の物質を取り込み、その過程で放出される膨大なエネルギーによって、連星の周囲には巨大なガス環が形成されていることが確認された。吸収の速度は理論的な限界に近く、地球規模の惑星であれば約4か月で飲み込む計算になるという。
共同研究者であるサウサンプトン大学のフィル・チャールズ教授は「100年以上の謎がようやく解明された。白色矮星が異常なまでに明るく輝くのは、伴星から得た物質を燃料に、地獄の炎のような光を放っているからだ」と説明している。
ハカラ博士はさらに、この研究で発見された両星を取り巻くガス環について「予期せぬ構造であり、星々の最期の饗宴で飛び散った破片で形成されたものだ。我々の星の生と死を理解する手がかりとなる」と語った。
また、ラ・ラグーナ大学のパブロ・ロドリゲス・ヒル博士は「白色矮星に物質が蓄積されることで近いうちに肉眼で確認できる新星爆発が起きる可能性がある。最終的に両星が衝突すれば、昼間でも観測できるほどの超新星爆発を起こし、最期を迎えるだろう」との見方を示している。
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