
7月30日の米韓関税交渉の妥結を受け、韓国では自動車関税が日本同様15%に引き下げられ、半導体や医薬品分野でも最恵国待遇が適用されると当然のように考えられていた。ところが先月25日の米韓首脳会談で共同声明をまとめようとした両国は意見の相違を埋められず、署名は不調に終わり、韓国産自動車には依然25%の関税が課されたままだ。
◇ 「韓国のカネで米国の経済安全保障」
米韓間の関税交渉署名が不調に終わった理由は何か。最大の争点は対米投資基金3,500億ドル(約51兆6,831億700万円)の使用権限だ。これは今年の韓国政府予算の70%に相当する巨額だ。米国はこれについて、日本の対米ファンドと同様に全権を行使する立場だ。
米国は韓国産自動車の関税引き下げを事実上の「人質」としている。日本は米国に約束した5,500億ドル(約81兆円)の投資の使用権を実質的にトランプ大統領に譲渡する協定に署名して、初めて自動車関税引き下げなどを盛り込んだ米日貿易協定を文書化できた。ハワード・ルトニック米商務長官が11日(現地時間)、日本の事例に言及しながら韓国に「柔軟性はない」と述べたのは、「日本のようにせよ」という露骨な圧力だ。
ルトニック長官はまた最近のインタビューで、日本と韓国の資金を合わせて「経済安全保障基金」を設立すると述べた。日本の5,500億ドル(約81兆円)と韓国の3,500億ドル(約51兆円)を合わせた9,000億ドル(約132兆円)を原資とし、米国内で半導体や医薬品、造船などの製造業インフラを整備する計画だ。
米国は先月の交渉過程で、韓国が1,500億ドル(約22兆1,499億300万円)を造船業専用ファンドとして運用しようとした提案も受け入れなかった。トランプ大統領の意向通りにこの基金が運用されるべきで、「韓国造船業」を特定し、韓国政府と投資対象を共同決定することを否定的に見たためだ。
グーグルの地図情報の輸出や網使用料の賦課問題、果物・野菜の検疫緩和など非関税障壁に関しても米国側が言及しているが、交渉での比重は相対的に小さい。
◇ 韓国企業支援も不透明
韓国が対米投資基金3,500億ドル(約51兆6,831億700万円)に対して当初受け入れ姿勢を示したのは、この基金を韓国企業の米国進出支援に活用できると期待したためだ。一部は資本金拠出の形を取るが、大部分は融資や保証支援で構成されるだろうと、キム・ヨンボム大統領室政策室長が説明したことがある。
しかし、今は状況が変わった。米国はこの資金を韓国企業の進出支援に使うと約束していない。また、融資や保証の代わりに出資を行うこと、即時投資を開始すること、投資が進まなければ関税を元に戻すことなどを要求している。ルトニック長官は当日のCNBCインタビューで、日本が拠出した投資金を回収するまでは米国と日本が利益を50対50で分配し、その後は90対10で米国が資金を保有する条件だと説明した。韓国にも同じ条件を要求するとみられる。
資金の性質が変わっているにもかかわらず、同額を無条件で譲渡するよう求める米国側の要求を韓国が受け入れるのは難しい。イ・ジェミョン大統領は11日の就任100日記者会見で、「交渉の表面に表れているものは粗暴で、過激で、行き過ぎで、不合理かつ非常識だ」と厳しく批判した。
韓国は経済規模が日本に比べて小さく、外国為替市場への影響などを考慮すると、日本と同じ条件で署名するのは困難な状況だ。資金を確保するには、産業銀行や韓国輸出入銀行などが国内外で発行した債券資金をドルに換金する必要がある。現在、韓国が外国為替市場で調達できるドルの規模は年間200億~300億ドル(約4兆9,222億660万円~約7兆3,833億100万円)に過ぎない。3,500億ドル(約51兆6,831億700万円)もの換金待機需要が発生すれば、ウォンが継続的な価値下落圧力を受けるのも問題だ。
「外貨準備の防波堤」とされる米国との通貨スワップも結ばれていない。一方、日本は米国と無制限の通貨スワップを締結し、基軸通貨国としての地位を持つ。7月末時点で日本の外貨準備高は1兆3,044億ドル(約193兆円)に達し、韓国の4,113億ドル(約61兆円)の3倍を超えている。
無理な強行により産業銀行や輸出入銀行などの資本比率が急激に低下すれば、これらが発行する債券の金利が急騰する可能性がある。
日本と韓国における自動車の比重はほぼ同じだ。昨年の日本の対米輸出額21兆2,951億円のうち自動車が28.3%を占め、韓国は1,280億ドル(約19兆円)のうち366億ドル(約5兆円)で28.5%を占めた。
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