映画スター出身の政治家を見ようと殺到 圧死事故で39人死亡、インド騒然

インドで有名な映画俳優出身の政治家の遊説イベントに人々が殺到し、少なくとも39人が圧死、51人が負傷する惨事が発生した。
ロイター通信などによると、2025年9月27日、インド南部タミル・ナードゥ州カルールで行われた有力政治家ジョセフ・ビジェイ・チャンドラセカール氏(51)の遊説に、支持者が一斉に押し寄せた。ビジェイ氏を一目見ようと群衆がステージ前のバリケードに殺到し、圧死事故につながったという。
SNS上に出回った映像では、数千人の支持者に囲まれたビジェイ氏が大型遊説車の上で演説する姿が映っている。やがて群衆が車両へ押し寄せ、失神者が続出。ビジェイ氏は水のボトルを投げて人々に渡そうとする場面もあったが、事態は制御不能に陥り、最終的に警察へ助けを求めた様子も確認された。
現場に居合わせた市民は「会場はバリケードで囲っていたが、人々が一斉に押し寄せ、もはや誰にも制御できなかった」と証言している。
M.K.スターリン・タミル・ナードゥ州首相は「これまでに男性13人、女性17人、少年4人、少女5人を含む39人が死亡し、男性26人と女性25人を含む51人が集中治療を受けている」と発表した。事故原因については調査委員会を設置して解明し、必要な追加措置を講じる方針を示した。また、犠牲者の遺族に対しては100万ルピー(約170万円)を支給すると明らかにした。
警察幹部は「当初は1万人規模の集会許可を申請していたが、実際には2倍以上の人が集まった」と説明。ビジェイ氏の所属政党の幹部を相手に訴訟を起こしたことも明らかにした。
ビジェイ氏は南インドのタミル語映画界で30年以上にわたりトップ俳優として人気を集めてきた人物で、昨年に地域政党を設立し党首に就任した。来年初めに予定される地方選挙に向け、今回カルールで遊説を行っていた。
事故後、ビジェイ氏はSNSに「胸が張り裂ける思いだ。言葉にできない痛みと悲しみに沈んでいる。命を落とした同胞の家族に深い哀悼の意を表し、入院中の方々の早い回復を祈る」と投稿した。
ナレンドラ・モディ首相も「カルールでの政治集会中に起きた悲劇に深い悲しみを覚える」と述べ、犠牲者の遺族に哀悼の意を示した。
ビジェイ氏の集会には、政界進出後から毎回大勢の人々が押し寄せている。警察当局はこれまで、会場の変更や車列の規模制限などを講じてきたが、参加者数が多すぎて現地インフラの許容量を超える事態が繰り返されていたとされる。
コメント0