
中国は、最近公表した希土類輸出規制に関する文書を、自国産オフィスソフト専用のファイル形式に限定した。米中の技術覇権競争は、文書閲覧方式にまで及んでいる。
米マイクロソフト(MS)のワードでは開けず、中国製オフィスソフト「WPS Office」でのみ閲覧可能とする措置について、中国のデジタル自立および安全保障戦略の一環とみる見方が出ている。
13日付の香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)は、中国商務部が9日に発表した希土類輸出規制文書の添付ファイルが「WPS Office」専用形式で配布されたと報じた。従来のMSワードやPDF形式から外れた初の事例として注目を集めた。
WPS Officeは、北京に本社を置くキングソフトが開発した国産オフィスソフトで、MSオフィスとは異なるコード構造を採用しており、基本的に互換性がない。
文書を閲覧するにはWPS Officeをインストールするか、別途変換作業を行う必要があり、米国製ソフトでは直接閲覧できない。
今回の措置は中国のインターネット上で注目を集め、単なる形式変更ではなく、デジタル主権強化と技術独立を目指す動きの一環とする分析が広がった。
特に希土類資源の管理が米中貿易摩擦の主要争点として浮上する中、文書フォーマットにまで自国技術を導入したのは、戦略的意図を反映した措置だ。
ドナルド・トランプ米大統領は「すべての主要ソフトウェアの対中輸出を制限する可能性がある」と警告し、マイクロソフトは4月、上海の長江ハイテク産業開発区に設置していた人工知能研究所を閉鎖した。さらに、中国国内の実店舗事業からも全面撤退した。
一方、中国は近年、政府機関や国有企業、大学など公共部門を中心に、外国製ソフトウェアへの依存を減らし、国産システムの導入を拡大してきた。
2022年には、中国国務院直属の国有資産監督管理委員会(SASAC)が国有企業に対し、2027年までに運用システムと業務用ソフトウェアを全面的に国産化するよう指示した。
政策の方針に沿い、航空会社や銀行など主要インフラ機関はすでにMSウィンドウズ系システムからWPSなど国産ソフトウェアへの移行を完了したとされる。
WPS Officeは現在、中国国内で市場シェア首位のオフィスプログラムとして定着しており、テンセント、ファーウェイ、アリババなどの大手IT企業も、メールやクラウドシステム分野で国産技術への移行を加速させている。
中国商務部の措置を受け、WPSを開発するキングソフトの株価は13日時点で13.82%上昇し、市場の期待を映した。
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