ドナルド・トランプ米大統領が「カナダを米国の51番目の州にする」と豪語して以来、悪化していた米加関係が改善に向かうかに見えたが、思わぬ「火種」が浮上した。カナダ連邦政府ではなく、地方政府のトップがトランプ大統領に公然と反発したことで、事態はさらに悪化した。激怒したトランプ氏は「当面、カナダとは会わない」と述べ、両国間の通商協議再開の可能性を一蹴した。カナダ側の今後の対応が注目される。
一部では、米大リーグ(MLB)のワールドシリーズでカナダのチームと米国のチームが対戦し、まるで「国家対抗戦」の様相を呈していることが、今回の対立を刺激した可能性もあるとの見方が出ている。

27日(現地時間)、英『BBC』によると、カナダ・オンタリオ州のダグ・フォード州首相は、最近同州政府の支援で放映されたテレビ広告をめぐりトランプ大統領が激怒したことについて、「われわれは目標を達成した」と述べ、全く後悔していない姿勢を示した。広告は米国による世界各国への関税賦課を批判する内容となっている。同広告は英国内やインドなどでも話題となり、再生回数は10億回を超えた。フォード氏はこれを「北米史上で最も成功した広告」と自賛したうえで、「トランプ大統領はわが国を攻撃しようとしているが、私は決して屈しない」と強調した。
一方、トランプ大統領は怒りを隠さず、カナダとの貿易交渉を全面的に中断すると発表した。さらに、カナダ産品に10%の追加関税を課す報復措置にも踏み切った。韓国・慶州(キョンジュ)で開かれるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議には、トランプ大統領とカナダのマーク・カーニー首相がそろって出席する予定だが、トランプ氏は「カーニー首相とは長い間会うつもりはない」と述べ、会談を行わない意向を示した。
問題となったオンタリオ州のテレビ広告には、米国第40代大統領ロナルド・レーガン(1981〜1989年在任)が1987年のラジオ演説で語った「関税はすべてのアメリカ人に打撃を与える(hurt every American)」との発言が引用されている。レーガン氏はトランプ大統領が最も敬愛する政治家の一人で、トランプ氏は就任後、ホワイトハウス執務室の壁にレーガンの大型肖像画を掲げたほどだ。トランプ大統領は、この広告がレーガン演説の文脈を無視し、一部を切り取って利用したものだとして、「詐欺的(fraudulent)だ」と強く非難した。
トランプ第2期政権の発足後、米国とカナダの関係は急速に冷え込んでいる。トランプ氏がカナダを「米国の51番目の州」と揶揄し、カナダの首相を「州知事(Governor)」と呼んだことで、カナダ国内では反米感情が高まった。しかし、カナダ政府が冷静な対応に徹し、トランプ氏も発言のトーンを抑えた結果、関係は一時的に安定した。今月7日にホワイトハウスで行われた首脳会談では両首脳が和やかな雰囲気を演出し、関税再調整を含む新たな通商協定の妥結が間近とみられていた。
カーニー首相は、カナダ連邦政府ではなく地方政府の行動によって米国との関係がこじれたことに困惑しているとみられる。「米国と向き合う準備はできている」と述べ、交渉再開への強い意欲を示した。
一部では、オンタリオ州を本拠とするトロント・ブルージェイズがMLBワールドシリーズに進出したことが、トランプ大統領の機嫌を損ねたのではないかとの指摘もある。MLB球団の中で唯一のカナダチームであるトロントがロサンゼルス・ドジャースと4勝先取のシリーズで対戦するため、今年の戦いは「米国だけの祭典」ではなく、両国のプライドを懸けた「国家対抗戦」の様相を呈している。















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