
ドナルド・トランプ米大統領が、関税の合憲性を巡る米連邦最高裁判所の判断で敗訴した場合、これまで徴収した関税を返還しなければならないとして、連日その「返還額」を引き上げて主張している。
国家への損害を強調し、最高裁に圧力をかける狙いとみられるが、わずか数時間のうちに推定額を約1兆ドル(約154兆5,658億8,000万円)上乗せするなど、具体的な根拠を示さず数字だけが膨らんでいるとの指摘が出ている。
トランプ大統領は11日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で「関税が違憲との決定が出れば、すでに行われた投資や今後の投資、資金の返還を含め、返還総額は3兆ドル(約463兆8,053億6,000万円)に達する」とし「これは克服不能な国家安全保障上の危機であり、米国の未来を破壊するだろう」と主張した。
最高裁判所は、トランプ政権の関税措置が議会の権限を侵害し、職権乱用にあたるかを審理しており、早ければ年末から年明けにかけて最終判断を示すとみられている。
トランプ大統領が任命した保守派判事の一部からも「関税措置には憲法上の問題がある」との見解が出ており、敗訴の可能性が浮上する中、トランプ大統領は世論戦を強めている。
仮に最高裁が関税を違憲と判断すれば、トランプ政権は今年、世界各国から徴収した関税を企業や輸入業者らに返還する必要が生じる。
しかし、トランプ大統領は「返還額3兆ドル」と主張するわずか10時間前の10日午後には、トゥルース・ソーシャル上で「(敗訴すれば)返還額は2兆ドル(約309兆2,700億円)を超える」と投稿していた。
わずか半日足らずで返還額を1兆ドル引き上げた計算になる。トランプ大統領は返還額の根拠については一切明らかにしていない。
一方、米政府内の試算では、仮に最高裁で敗訴した場合でも、返還額は1,000億ドル(約15兆4,633億3,300万円)前後と見積もられている。
米財務省によると、トランプ政権発足から10カ月間で徴収された関税総額はおよそ890億ドル(約13兆7,635億3,800万円)にとどまる。
米通商代表部(USTR)のジェイミソン・グリア氏も「返還額は1,000億ドルを超えても2,000億ドル(約30兆9,303億2,800万円)には達しないか、その程度だろう」と述べていた。
トランプ大統領が主張する2兆ドルから3兆ドルという数字は、この推定額の20倍から30倍以上にあたる。
以前、トランプ大統領は「関税収入を財源に米国の低所得層を中心に国民1人あたり2,000ドル(約30万9,313円)を支給する」との構想を掲げ、最高裁に対して関税政策の維持を促すような発言も行っていた。
最高裁で違憲判決が下された場合、トランプ大統領が就任前から掲げてきた関税政策の正当性自体が揺らぐことになる。
トランプ政権は、仮に違憲と判断されても通商拡張法などの法的手段を活用し、現在の関税政策を継続する方針だと説明している。
しかし、専門家の間では「継続は可能でも、その強度や持続性は大幅に低下する」との見方が広がっている。














コメント0