
ドナルド・トランプ米大統領と習近平中国国家主席が、韓国・釜山(プサン)での首脳会談からわずか3週間後に電話会談を行った。
Newsisによれば、習主席としては高市早苗首相による「台湾有事への関与」発言をめぐり日中間の対立が高まるなか、トランプ大統領に働きかけて日本を牽制する狙いがあったとの見方も出ている。
トランプ大統領は24日(現地時間)、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で習主席との通話を明らかにし「ウクライナやロシア、フェンタニル、大豆など農産品の問題を含む幅広いテーマについて話し合った」と投稿した。
これに関し、キャロライン・レヴィット米ホワイトハウス報道官は記者団に対し、両首脳は約1時間にわたり電話会談を行い、ウクライナ情勢にも触れたものの、主な焦点は二国間の通商協定だったと説明した。
一方、中国国営の新華社も習主席がトランプ大統領と通話したと報じたが、米国側とは内容が大きく異なっていた。米国側は台湾問題に言及しなかったのに対し、中国側は習主席が「台湾が中国に属するという立場は戦後国際秩序の重要な構成要素だ」と述べたと伝えた。
さらに、台湾に関する中国の原則的立場を強調し、「中国と米国は過去にファシズムや軍国主義に共に立ち向かった歴史があり、現在は第二次世界大戦の成果をより確固として守らなければならない」としたと中国官営メディアは報じた。
トランプ大統領はこれに対し「台湾問題が中国にとって、いかに重要か理解している」と応じたとされる。
両国の発表を総合すると、今回の通話で米国は経済、中国は安全保障に重点を置いたとみられる。
事情に詳しい関係者はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、習主席の主要関心事は台湾であり、トランプ大統領は話題をウクライナへと転換したと伝えた。
特に今回の通話は、習主席側から提案したという点で異例とされる。台湾問題をめぐる日本との緊張が高まる中で、トランプ大統領に直接圧力をかける意図があるのではないかとの見方も浮上している。
台湾とウクライナは米中関係における極めて敏感な問題であり、首脳会談で取り上げられることは稀だ。先月30日の釜山での首脳会談でも台湾問題は扱われていなかった。
しかし、この3週間で高市総理が「台湾有事の際には自衛権を行使し得る」と発言し日中関係は急速に悪化。習主席が自ら接触するという外交的シグナルを発した可能性が指摘されている。
ジョー・バイデン前米大統領は、中国が台湾へ軍事侵攻した場合には米軍が防衛すると4度明言したのに対し、トランプ大統領はより慎重な姿勢を取り、発言を控えてきた。
米シンクタンク「民主主義防衛財団」のクレイグ・シングルトン中国担当上級研究員はニューヨーク・タイムズ(NYT)に対し「中国が日本の発言に強く警戒している理由は、台湾の安全保障が共通利益だという認識の下で地域連携が進んでおり、封鎖や攻撃の際には協調対応が取られると中国が理解しているためだ」と説明した。
さらに「トランプ大統領へ直接圧力をかけることで、習近平主席は地域連携が固まる前に、中国側に有利な物語を米国が受け入れるよう誘導しようとしている」と分析した。
オバマ政権時代にホワイトハウスでアジア政策を担当したエヴァン・メデイロス米ジョージタウン大学教授もWSJに対し「習主席が先に電話をかけたのは極めて異例で、トランプ大統領の見解形成に影響を与える機会があると考えている証左だ」と語った。
そのうえで「台湾政策は明らかに習主席の最優先事項であり、米国の立場を中国側に近づけようとしている」と指摘した。
今回の通話ではウクライナ情勢にも触れられており、習主席が台湾や関税など中国の懸案に関して米国から譲歩を引き出し、その見返りとしてウクライナ戦争の終結支援に関与する可能性があるとの観測も出ている。
ウクライナ戦争を通じて習主席は、ウラジーミル・プーチン露大統領と緊密な関係を維持し、ロシアの防衛産業を支えてきた。
米シンクタンク「スティムソン・センター」のウィン・スン中国プログラム主任はWSJに対し「中国はウクライナ和平協定を注視しており、より積極的に関与する必要性を感じている」と述べた。














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