
イギリスに住む視覚障がいのある男性が、公共交通機関を利用した際に経験した胸の痛む出来事を明かし、多くの人々の心を揺さぶっている。
この出来事の主人公であるアミット・パテル氏は、自身の頼もしいパートナーである盲導犬の「キカ」と共に、ロンドンのウォータールー駅周辺を移動していた。
しかし、移動時間がちょうど通勤ラッシュと重なってしまい、二人は足の踏み場もないほど混雑した満員の地下鉄に乗ることになった。

視界が確保できない状況でも、パテル氏は普段通り、車内の優先席において周囲からの配慮があることを信じて乗車したという。
だが、その日の満員電車の中では、忙しさに追われる人々の間に、ほんの小さな思いやりさえ見つけることができなかった。
結局、目的地に到着するまで一度も座ることができず、立ったまま耐え続けたパテル氏は、駅に降りた瞬間、抑えていた涙を流してしまった。
同氏が涙を流した理由は、単に座れなかったからではない。
狭い車内で押し寄せる人波の中、盲導犬のキカは主人のそばを離れず、数え切れないほど他人の足に踏まれ、ぶつかられながらも耐え忍んでいたのである。

主人を安全に導くという使命感だけを胸に、キカは乱暴な足取りや圧迫の中でも一切鳴き声を上げず、身をもって耐え続けていた。
その後のメディアインタビューでパテル氏は「キカは徹底した訓練を受けた盲導犬であるため、人に踏まれたり叩かれたりしても絶対に声を出さない」と語り、沈痛な心情を伝えた。
続けて「吠えはしなかったが、移動中ずっとキカの全身が恐怖で震えていることを指先でしっかりと感じることができた」と述べ、自責の念に言葉を詰まらせたという。
不安な思いをさせまいと、痛みを押し殺して耐え続けた盲導犬キカの献身は、他者への思いやりを忘れがちな現代社会に対し、深い反省と問いかけを投げかけている。













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