
テスラが約10年前、モデル3の開発過程で電動式ドアハンドルの採用を強行した判断が、昨今の安全性を巡る論争に発展している。
23日(現地時間)、「ブルームバーグ」の報道によると、北米・欧州・アジアの3大陸にわたる規制当局は、電子式ドアハンドルが故障した場合に従業員や乗員が車内に閉じ込められたり、救助が遅延したりする恐れがあるとして、安全性の点検を進めているとのことである。
論争の発端は2016年初頭、テスラが量産セダン「モデル3」の開発を最終段階に進めていた時期に遡る。当時、一部のエンジニアは衝突事故などの緊急時を考慮し、機械式ハンドルを維持すべきだと主張していた。しかし、社内議論に参加していたイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、電子式設計を貫いたとされる。テスラは既にSUV「モデルX」において、ドアセンサーの誤作動を巡る顧客の不満を抱えていた状況であった。
マスク氏は、モデル3のドアハンドルを含む主要機能をボタンやタッチスクリーンで制御すべきだとの考えを明確にしていた。アップルのソフトウェア中心のタッチスクリーン・インターフェースを高く評価し、モデル3にも未来志向でシンプルな設計を求めていたという。「ブルームバーグ」によれば、当時の会議でマスク氏は「最良の部品とは、そもそも存在しない部品である」と語り、徹底した簡素化の哲学を強調したとされる。
こうした判断の影響は、時間の経過とともに表面化している。テスラ車の電動式ドアハンドルは低電圧バッテリーで作動するため、事故後にバッテリーが失効するとドアが開かず、脱出や救助が遅れる可能性がある。 「ブルームバーグ」は、過去10年間に米国で発生した事故のうち、ドアが開かなかったことが原因で少なくとも15人が死亡した12件の事例を確認したと報じている。米運輸省道路交通安全局(NHTSA)は現在、テスラ車の電動式ドアに関する本格的な調査を進めている状況である。
中国当局は、車体と一体化したフラッシュ型ドアハンドルに対する規制強化を検討しており、欧州の規制当局も電子式ドア開閉装置に関する規定整備を優先課題に位置付けている。こうした設計はテスラの全車種に採用されているほか、他の完成車メーカーにも広がりつつある。
テスラは、関連法規を遵守しており、衝突安全性評価でも高得点を獲得しているとの見解を示している。一方で、デザイン統括責任者のフランツ・フォン・ホルツハウゼン氏は、電子式と手動式の解除機構を組み合わせた新たなドアハンドル設計を検討していると明らかにした。緊急時でも、より直感的に操作できるよう改良する狙いがあるとのことである。













コメント0